リーチ マイケルが「東芝愛」を貫き初の日本一 10年ぶりに「潤滑油」として徹したキャプテンシー (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji

 そして今季、指揮官は優勝するために「影響力と経験があり、チームに落ち着きをもたらし、信念をドライブするために必要」という思いから、35歳のリーチを主将に指名した。リーチは「自分のプレーに集中したい」と一度は断ったが、最後はその思いを受け入れて10シーズンぶりのキャプテン復帰を決断した。 

 国際経験が豊富で英語も日本語も堪能なリーチは、選手とコーチ陣との架け橋となった。選手たちには厳しく要求する一方で、コーチ陣には選手側からの要望を伝えた。

 たとえば、試合2日前の練習が激しく試合当日に疲れが見えたら「少し強度を落としてほしい」とコーチに直訴。「試合へのプロセスがよくなっていけば、自然とパフォーマンスもよくなっていった」とリーチは振り返る。

 その一方で、グラウンドを離れれば、自宅で焼き鳥を100本ほど注文して大勢の選手を招待したり、韓国人選手たちと一緒に新大久保に行ったり、南アフリカ出身の選手と一緒に手作りソーセージを作ったり......。ピッチ内外でリーチは「潤滑油」の役割を果たしていた。

 現役選手で14シーズン前の優勝の味を知っている者はいない。リーチはチームで上から数えて3番目のベテランとなったが、「東芝は上と下のギャップもなく、選手同士の仲がいい。そこがいいところ」と目を細める。若手選手から「リーチさんを優勝させたい」「リーチさんを喜ばせたい」という声が多く聞かれたが、それも当然のことだった。

 リーチには東海大3年時、大学選手権の決勝戦で間違えて両方右足のスパイクを持参して負けたという逸話がある。今回の決勝戦には、あえてスパイクを3足持ち込んで臨んだ。「人生初の全国優勝。時間はかかったが、メンバーの入れ替えも激しいなかでしっかり継続できるようなレガシーを残していきたい」と、リーチはキャプテンらしく、すでに来季も見据えていた。

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