「雪の早明戦」など数々の名勝負を生んだラグビー早明戦 かつて国立に6万人を集めた伝統の一戦にルーキーは「鳥肌が立った」 (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji

【両チーム合わせて14トライを記録した乱打戦】

 縦の明治、横の早稲田──。100周年を迎えた今年の早明戦は、昔から言われている伝統的なカラーが色濃く出た試合となった。

「理想的な前半だった」と神鳥監督も選手も口を揃えたように、明治大は前半からFW陣を中心に接点で前に出てペースを握る。早稲田大がたまらず反則を犯すとラインアウトを選択し、前半5分、23分にはFW陣がモールを押し込んでHO松下潤一郎(4年)が2トライを奪う。

 さらに20-3とリードした前半39分にも「ゴール前に来たらピック(&ゴー)で攻めると決めていた」PR為房慶次朗(4年)が飛び込んでゴールも決めて27-3。大きくリードを広げて前半を折り返した。

 後半も流れは変わらず。20分までに明治大のBK陣が2トライを重ねて41-3。このまま一方的な流れで進むかと思われた。しかし、そのままで終わらないのが「早明戦」である。

 早稲田大キャプテンFB伊藤大祐(4年)は覚悟を決める。

「前半が終わって苦しい展開になったが、早明戦というビッグイベントでお客さんが見ていて、早明戦を見て早稲田に入った選手も多くて、そんな部員を見ていて、このままじゃ終われないという気持ちがあった」

 その言葉どおり、早稲田大は残り20分、「積極的に攻めよう」と自陣からでもボールを回し、BK陣が誇る持ち前の展開力を披露。後半27分のWTB矢崎由高(1年)のトライを皮切りに一気に5トライを重ねて、46-38と8点差まで迫って意地を見せた。

 しかし、早稲田大の反撃もこれまで。ロスタイムに明治大が2トライを奪ってノーサイド。両チーム合わせて14トライを記録した乱打戦は、明治大の勝利で幕を閉じた。

 試合後、敗北を喫した早稲田大の大田尾監督は、「接点が起こるエリア、スペースの取り合いのところで全部、後手を踏んだ。一番恐れていたシナリオになってしまった」と肩を落とした。

 対抗戦最後の早明戦となった伊藤主将は「やっぱり勝ちたかった。前半に接点バトルで(相手に)いかれた部分がすべて。もう1回、どちらも勝ち上がったら同じ舞台(準決勝)でできるので1戦、1戦、準備したい」と大学選手権に向けて前を向いた。

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