元ラグビー日本代表・真壁伸弥が明かす強豪・南アに勝利した要因と現在の日本代表へのエール (3ページ目)

  • 齋藤龍太郎●文 text by Saito Ryutaro
  • photo by アフロ

──逆転決勝トライの起点になった後半42分過ぎの最後のスクラムに代表されるように、4年かけて鍛え上げられたスクラムは常に安定していました。

「やはり最後のスクラムが注目されがちですが、その少し前の後半35分、自陣ハーフウェイライン付近の相手ボールのスクラムでめちゃめちゃしっかり押すことができて、FWの気持ちが一気に高まりました。そこで押せたからこそ最後のゴール前(での相手ペナルティ)でどう(プレー選択)するか、となった時にFW全員が『スクラムでいける!』という感覚になったんです。

 あの場所(敵陣ゴール前)では(相手のシンビンもあり)人数的にも、そしてそれまでの練習を考えても、スクラムを選択するのみでした。"ここで勝負だ、俺たちはやるぞ"という思いでしたね。もちろんFWだけではなくその前にBK、特にCTB立川がボールを大きく前に運んでくれたのも大きかったです」

──それが最後のアタックにつながり、WTB(ウイング)カーン・ヘスケス選手が逆転トライを決めます。

「あの場面で本当にすごかったのはキャプテンのFL(フランカー)リーチ マイケルですね。最後のアタックだけで3回ボールタッチして、3回ともインゴールに迫っていました。キックオフからずっと走ってきて、何度もスクラムを組んで、最後にあの脚力が出せたというのは何よりもすごいことです」

──選手たちは喜びを爆発させていました。ただ、映像では歓喜の輪の周辺では真壁さんの姿を確認することはできませんでした。

「ああ、勝ったんだなあ、とその場で思いながら10秒ぐらい経ってから『出遅れた!』と我に返ったのを覚えています(笑)」

後編に続く>>元ラグビー日本代表・真壁伸弥が唱えるイングランド戦勝利のカギ 相手の長所と「真っ向勝負」

【profile】
真壁 伸弥(まかべ・しんや)
1987326日生まれ、宮城県仙台市出身。現役時代のポジションはLO。仙台工業高校でラグビーを始め、恵まれたサイズを活かして高2U17東北代表に選出。その後U19日本代表にも選ばれキャプテンも務めた。中央大学でも活躍しサントリー(現、東京サンゴリアス)に加入すると、主力として、またキャプテンとしてチームを牽引。トップリーグ4回、日本選手権5回の優勝に貢献した。2009年に日本代表デビューし、2015年のラグビーワールドカップに出場。南アフリカ戦を含む3勝の立役者のひとりに。スーパーラグビーのサンウルブズでもタフな働きを見せた。201911月、現役引退を表明。日本代表37キャップ。現在はサントリーの社員、東京サンゴリアスのパートナーシップ、解説者、ウイスキープロフェッショナルなど様々な立場で活躍中。

プロフィール

  • 齋藤龍太郎

    齋藤龍太郎 ((さいとう・りゅうたろう))

    編集者、ライター、フォトグラファー。1976年、東京都生まれ。明治大学在学中にラグビーの魅力にとりつかれ、卒業後、入社した出版社でラグビーのムック、書籍を手がける。2015年に独立し、編集プロダクション「楕円銀河」を設立。世界各地でラグビーを取材し、さまざまなメディアに寄稿中。著書に『オールブラックス・プライド』(東邦出版)。

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