ラグビー早慶戦は早稲田大が逆転勝利。「深夜まで行なったミーティング」がFW陣の心をひとつにした (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

帝京大戦の完敗で覚悟を決めた

 この試合のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた佐藤は、トレードマークの大きな笑顔を見せながら後半の様子を振り返る。

「(試合前に)『いけると思ったら行きます!』と言って、そのとおりになりました。僕がトライしたらみんなが寄ってきてくれた。FW全体で取れたトライです。今日がワンパック、チームがひとつになれました!」

 佐藤の"トイメン(向かい合わせ)"に位置する慶應大のHO中山大暉(2年)は、桐蔭学園時代の同期で「花園」全国高校ラグビー大会をともに連覇した仲だ。大学の公式戦では初対決となっただけに、「大暉は誰が見てもいい選手。負けたくない気持ちが出た」と振り返る。

 11月6日、早稲田大は昨季の王者・帝京大に17-49で大敗を喫した。特にFW陣が完敗で、佐藤も世代トップを走る同ポジションのHO江良颯(4年)に後れを取ってしまった。憮然とした表情で試合後の会見に出席していたことを佐藤に聞くと、「負けず嫌いなので......すぐに顔に出ちゃう。悔しかったです!」と語っていた。

 帝京大戦から数日後、今季の早稲田大を引っ張るキャプテンFL(フランカー)相良昌彦(4年)はFW陣を集めてミーティングを開いた。「FWが変われば、このチームは変わる。覚悟を決めて、本気で話し合った」(佐藤)。21時頃から意見を交わし合い、話が終わった頃は日付が変わっていた。

 佐藤もミーティングで気持ちを伝えたという。

「(大学選手権の決勝まで)残り9週間。今が変われるチャンス。僕はラグビーに(時間を)全部かけるから、みんなもかけてほしい!」

 このミーティングがなかったら『ワンパックのFW』になれていなかったと佐藤は語る。

 もちろん、今季から加わったコーチ陣の影響も大きい。今季スポットからフルタイムになった元日本代表PR(プロップ)仲谷聖史コーチがスクラムを、6月にトヨタヴェルブリッツを引退した元U20日本代表FL佐藤穣司コーチがモールや接点を指導してきた。

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