ラグビー早明戦、ミス連発の早稲田が敗戦「最初の10分、それが僕たちの弱さ」

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●撮影 photo by Saito Ryutaro

突破を試みるも、明大のディフェンスに阻まれた早大のフッカー・佐藤健次突破を試みるも、明大のディフェンスに阻まれた早大のフッカー・佐藤健次この記事に関連する写真を見る

 試練である。関東大学ラグビーの伝統の一戦で、早大は宿敵明大に先手をとられて21-35で敗れ、5勝2敗で対抗戦3位となった。全国大学選手権では、わずか1週間後の3回戦で東洋大と対戦することになった。

 12月4日。9年ぶりの国立競技場での開催となった早明戦には3万5438人の観客が詰めかけた。試合後、明大ファンの歌う校歌がスタジアムに流れ続けた。「おーお、メイジ~♪。おーお、メイジ~♪」

 スタンドの前に並び、早大選手は頭を下げる。「すごく悔しいです」。ゲームキャプテンのセンター(CTB)吉村紘はそう漏らし、続けた。言葉に苦渋がにじむ。

「最初の10分で圧力を受けてしまった。キックオフから相手の思いどおりの位置のセットプレーにされてしまった。テクニック的に言うと、フォールドですね。相手の回っていく時のスピードがはやくて、2フェーズ目から受けだしてしまった」

 フォールドとは、最近使われ出したラグビー用語の「フォールディング」のことで、ラック周りのディフェンス選手が順目(展開の方向)側へ移動してポジショニングすることを指す。つまりは、明大フォワード(FW)にテンポよく、順目のラックサイドを突かれてしまったわけだ。

 早大は、ボクシングで言えば、いきなりワンツーのパンチを受けてしまったようなものだった。明大ボールのキックオフ。このボールを簡単にタッチに蹴り出し、相手ボールのラインアウトとなった。明大はすぐにボールを出し、左プロップ(PR)の112キロ、中村公星が突進。タックルにいった早大の1年生フランカー(FL)栗田文介が差し込まれた。

 栗田の述懐。

「僕のファーストタックルが負けてしまった。あそこは僕がケアしないといけなかったのに......。(ゲームの)入りの甘さだった」

試合前の雰囲気がよくなかった

 早明とも、試合の入りの10分に勝負を懸けていた。早大の大田尾竜彦監督も「最初の10分が大事だぞ」と指示していた。選手は当然、大観衆に緊張感も高揚感もあっただろう。栗田はこうも小声で漏らした。「試合前の自分たちの雰囲気があまりよくなかったんです」と。

 明大のSHにラックサイドを持ち出され、今度は右PRの109キロ、為房慶次朗が突進。ラックからテンポよくボールを順目に出され、ラインに展開され、CTB齊藤誉哉に先制トライを許した。電光掲示はまだ「1:06」(1分6秒)だった。

 前半9分のトライもラインアウトからだった。敵陣からペナルティーキック(PK)を自陣まで蹴り込まれ、このラインアウトから明大にテンポのいい連続攻撃を許した。時折、FWがアングルを変え、ラックサイドを突進する。バックスがギャップを突く。12フェーズ(局面)目。明大のWTB(ウイング)石田吉平主将にトライを加えられてしまった。ゴールも決まり、0-14とリードされた。

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