オールブラックスが連覇へ視界良好。「勝ちグセ」の差が勝敗を決した (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji
  • 齋藤龍太郎●撮影 photo by Saito Ryutaro

 さらに前半19分、スクラムからのサインプレーでWTB(ウィング)ジョージ・ブリッジが左サイドを快走。一気にゴール前まで迫り、最後は再びスミスがインゴールにボールを持ち込んで17-0とした。

 アイルランドも反撃に出ようとするが、なかなかリズムに乗ることができない。昨年の世界最優秀選手SOジョナサン・セクストンやSHコナー・マレーなどチームの精神的支柱がミスを犯し、ニュージーランド代表に勢いを与えてしまった。

 試合の流れが傾いた空気を、オールブラックスは見逃さない。モウンガがセクストンにタックルを見舞い、ボールがこぼれる。そのボールをモウンガが前にキックすると、それにB・バレットが素早く反応する。転がっているボールを自らドリブルで前進させ、最後はインゴールでボールを押さえた。

 22-0で前半を折り返したオールブラックスの勢いは、後半も止まることはなかった。後半8分にはリードのオフロードパスを受けたHO(フッカー)コーディー・テイラーが中央に飛び込んで29-0として、ほぼ勝負を決めた。

 アイルランド代表も2トライを返す意地を見せたが、ニュージーランドもさらに3トライを重ね、終わって見れば46-14。ノーサイド後、両チームは一緒になって花道を作り、この試合で代表を引退するアイルランドのキャプテンHOローリー・ベストを見送った。

「プレイヤー・オブ・ザ・マッチ」には、トライやアシストだけでなく、ハイパントキャッチでも安定感を見せたB・バレットが選出された。

「生きるか死ぬかの決勝トーナメント。いいプレーができなければ(ニュージーランドに)帰らなければならなくなる。今日は祖父のためにもいいプレーがしたかった。祖父のことを思って戦った」

 10月13日に最愛の祖父を亡くしたB・バレットは、その名「TED」を記したテーピングを腕に巻いてアイルランド代表戦に臨んでいた。

 ワールドカップ過去9大会のうち、ベスト8は実に7回。アイルランド代表はまたしてもベスト8の壁を越えることができなかった。

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