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【ラグビー】早明戦で見せた、新生ワセダの大いなる可能性 (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • 高見博樹●写真 photo by Takami Hiroki

 試合前の校歌斉唱。藤田は笑っていた。6月の日本代表戦で右肩を負傷し、ようやくの一軍戦復帰である。試合後、述懐する。

「ワセダの試合が久しぶりだな、と思っていました。こんな大歓声の中でプレーできるのは幸せだなって。114人(の部員)がいる中で、23人しかアカクロのジャージを着て、校歌も歌えないのですから」

 そのエースが、反撃ののろしを上げる。明大に7点をリードされた前半28分、フェアキャッチから素早いリスタートでカウンターを仕掛け、個人技で40メートルほど大幅ゲインし、右側のポイントから左に回した。最後はSO横山からCTB小倉にボールが渡り、小倉が快足を飛ばして左隅にトライ。ゴールも決まり、同点に追いついた。

 その後も、早大ラインはよく前に出た。バックスのキーワードのひとつが「ストレート・ラン」。基本である。SO横山が効果的なキック、長くてはやいパスを出せば、CTB小倉はスペースを見つけてはタテに切り込んでいく。藤田も自在に走り、明大ディフェンスをほんろうした。

 藤田が振り返る。「ぼくの判断は悪かったのですが、チームとしてはいい試合ができて満足しています。この1週間、ワクワクしていました。大歓声の中で楽しめたので、よかったと思います」と。秩父宮ラグビー場での早明戦。歓声の量は国立に劣るだろうが、「観客が(フィールドに)近くて、いろんな声も聞けて楽しかった」という。

 ルーキーの横山はこうだ。「学校のプライドをかけた戦いというのがメチャクチャ印象に残りました。リラックスしてゲームを楽しむことができました」

 実は、藤田がチームに戻って、小倉も早朝練習に取り組むようになっている。午前6時半頃から30分間。ハンドリングとコミュニケーション、判断を磨いている。小倉が笑いながら説明する。「スキルが低いので。個性がそれぞれあるので、長所を互いに生かしながらやるのが大事なのかな、と思います」

 もちろん、早大バックスが機能したのも、FWの奮闘があったからである。とくに勝負どころの後半25分からのゴール前ピンチ。ラインアウトからの明大モールをつぶし、スクラムでは8人が結束して押し返した。これこそワセダのプライドの結晶だった。

 まだラインアウトやハンドリングの精度など課題も多いが、大一番で持ち味を出したことは大きい。新布陣への自信も膨らむ。主将のロック大峯功三は言い切った。「この勝利でチーム力が上がったと思います」

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