【ラグビー】早明戦で見せた、新生ワセダの大いなる可能性

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • 高見博樹●写真 photo by Takami Hiroki

『ワセダ』

 90回目を迎えた伝統の早明戦の前日。恒例のジャージ授与式の際、早大の後藤禎和監督は決意の寄せ書きの模造紙のど真ん中にこう、黒字で書いた。

 後藤監督が説明する。「僕は初めて、"ワセダ"をゲームのキーワードに使いました。早明戦が、ラグビー界で一番注目される形で続いてきたことを尊重する。それを今週、みんなで考えてきた。ワセダのDNA、伝統、文化、プライド......。そういうものを背負ってやる戦いだったのです」と。

 師走の7日。東京・国立競技場が改築されるため、1972(昭和47)年以来、42年ぶりに秩父宮ラグビー場で開催された。早明のOBらも多数駆けつけ、スタンドはほぼ満員の2万2千の観客で埋まった。37-24。早大が下馬評を覆(くつがえ)した。

今季初出場ながら、縦横無尽に走り回ったエース、藤田慶和(中央)今季初出場ながら、縦横無尽に走り回ったエース、藤田慶和(中央)

 後藤監督が小さく笑う。「みんな、絶対、向こうが勝つと思っていたでしょう。その中で勝つのって気持ちいいですね」
 
 早大は変わった。先発のSO(※1)に大ケガから復帰した1年生の横山陽介(神奈川・桐蔭学園高)が入り、これまでSOだった小倉順平がCTB(※2)に回った。さらにエースの日本代表、藤田慶和がFB(※3)で今季初めて先発出場した。

※1 スタンドオフ。スクラムやラックなどの密集からボールが出てきたときに最初にボールを受け取るポジション
※2 センター・スリークォーターバック。SOからウイングへパスを回す中継役。自ら突破を仕掛けるスピードも求められる
※3 フルバック。最後尾に位置して、バックスを統率。攻守にわたって、要のポジション

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