2冠達成。パナソニックの「3本の矢」がジャパンを進化させる (2ページ目)

  • 松瀬 学●取材・文 text by Matsuse Manabu 井田新輔●撮影 photo by Ida Shinsuke

 2つ目のポイントのプレーが、後半21分のJP・ピーターセンのトライのきっかけとなったナンバー8ホラニの猛ダッシュである。この日のホラニのタックルは凄まじかった。ラックサイドからロック劉永男と一緒にがばっと出て、東芝のSH小川高廣に圧力をかける。劉が小川のキックをチャージ。ホラニが拾って突進し、劉につないでラック。そこから出たボールを、SOバーンズが左足でオープンに絶妙なキックを蹴り、ピーターセンのトライにつながった。

 ホラニは言う。「向こうのブレイクダウン(タックル後のボール処理)は強かった。でも最初に倒してしまえば、うちのペースになる。ファーストタックルが勝負だった」と。タテにタテに切ってくる東芝のFWの下に入って潰していった。

 とくに後半23分に東芝のマイケル・リーチの猛突進からトライを奪われたあと、崩れそうになりながらも、パナソニックディフェンスは踏みとどまった。それが今季のパナソニックの強さだった。その先頭に立ったのがホラニだったのだ。

 3つ目のポイントのプレーが、SH田中のタックルだった。後半30分過ぎ。中盤の相手ボールのスクラム。FWが重圧をかけ、相手SHの小川がボールを持った瞬間、田中は早い仕掛けで小川をつぶした。相手の反則を誘い、ダメ押しのPGとなった。これぞ「ビッグ・プレー」だった。

 小柄な田中の体は闘志の塊(かたまり)か。そのタフさには驚かされる。スーパーラグビーのハイランダーズ(ニュージーランド)に参戦中ながら、またも今回の日本選手権決勝直前に緊急帰国(主将の堀江翔太=豪州レベルズ=は試合のため帰国せず)。さすがに疲労がプレーに出るのではと心配したが、なんの、なんの、獅子奮迅の働きでチームを勢いづけた。

 終盤右肩を痛めたが、「大丈夫です」と、田中は笑顔を振りまいた。試合直後、ダウンベストの私服に着替えての表彰式参加、急ぎ足で車に乗り込み成田空港に向かった。「(相手SHへのタックルは)いつも意識していることです。ディフェンスからチャンスをつくるのは、パナソニックの伝統ですから。サイコーです」

 チャンピオンの使命は、日本ラグビーをリードすることである。ならば、この「3本の矢」と堀江たちは、日本代表をレベルアップさせなければならない。

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