2冠達成。パナソニックの「3本の矢」がジャパンを進化させる

  • 松瀬 学●取材・文 text by Matsuse Manabu 井田新輔●撮影 photo by Ida Shinsuke

 パナソニックが笑う。トップリーグに続いて日本選手権も制し、『二冠』達成である。実は試合直前、ロッカー室から、控え選手の"花道"を通って出てくる際、選手の顔には笑みがあった。

トップリーグに続き日本選手権を制して2冠を達成したパナソニックトップリーグに続き日本選手権を制して2冠を達成したパナソニック 自信か信頼か。試合後、WTB山田章仁が言う。現在の国立競技場では最後の日本選手権。「素晴らしいスタジアムと雰囲気。それに見合うような試合をしっかりやろうと話し合っていた。相手の強さを体感しながら、試合を非常に楽しめました」と。

 二冠を支えたのは、個々の「ストレングス&フィットネス」と意識の高さ、状況判断である。ストレングスとは実践的な体の強さとパワーを指す。豪州代表51キャップのSOベリック・バーンズは別格として、その象徴が山田であり、SH田中史朗であり、ナンバー8のホラニ龍コリニアシであった。いわばジャパン期待の『3本の矢』である。

 9日の日本選手権決勝。レベルの高い接戦も、3つのプレーが勝利(30-21)をたぐり寄せた。前半30分。パナソニックはFW突進でラックをつくり、SH田中が近場でひょいと出てディフェンスの出足を止め、SOバーンズから、WTB山田にボールがわたる。相手FBのタックルをかわし、左から中央に駆けこんだ。

「いい球がきたので、僕は走っただけです」と山田が端正な顔を崩す。そうは言っても、決める時に決めるのは「いいWTB」の条件だ。相変わらず華がある。ボールを持たない時のポジショニングがうまくなった。

「相手との間合いもいい感じだった。相手のディフェンスの角度と守っている感じ、外のスペースから考えて、もらって外に走れば振り切れると思っていました」

 昨季は、アメリカンフットボールとの「二刀流」で話題になったが、今季はラグビーに専念した。体重を数キロ増の88キロとして、ストレングスをアップした。課題だったディフェンスも改善され、安定感が増した。体を張ってタックルにいけるようになった。

 昨秋の日本代表の欧州遠征でようやく初キャップ(代表戦出場)も獲得し、自信も膨らんだ。「体が大きくなるというか、しっかり使えるようになってきた。相手にあたりにいけるようになった。間合いとか、自分がコントロールできるようになりました」。短髪の28歳はひと皮向けたのだ。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る