【ラグビー】トップリーグと真っ向勝負。
日本選手権で帝京大が示した可能性 (2ページ目)
モールとは単にウエイトだけではない。まとまりや、低さ、姿勢、押しのアングル、体の使い方が大切なのだ。つまり意思統一。泉は独り言のようにつぶやいた。
「(モールでは)自分たちもひけをとらないと思っていたけれど、ゴール前は対応できませんでした。まとまりと圧力が違った」
さらに5分後、波状攻撃からパナソニックSHのイーリ・ニコラスにインゴールに走り込まれ、14-33と大量リードを与えた。
直後、帝京大が反撃する。今度は帝京大がPKをもらって、ゴール前5mのラインアウトの好機を得た。だがモールを押し込めない。左サイドに持ち出し、6度、ラックを連取しながらも、最後はロックのジョシュア・マニングがノックオンを犯した。
あと1m。トライはならなかった。結局、ゴール前のプレイの精度、球際の厳しさが足りなかった。判断と予測、周りとのコミュニケーションが雑になった。TLでもまれてきた相手と、学生相手に圧倒してきた帝京大。コンタクトのダメージの蓄積が後半の心身の疲労に出た格好である。
ただ昨年の日本選手権と比べると、TLチームとの個々のフィジカルでの差は縮まった。泉が言葉を足す。
「セットプレイ(スクラムとラインアウト)、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)、タックル......。通用した部分と通用しなかった部分があった。次に成長できる試合だったんじゃないかなと思います」
確かにブレイクダウンでもタックルでも、帝京大は体を張った。特に交代出場の1年生のナンバー8、坂手淳史の思い切りのいいタックルには心がふるえた。バックスのSO中村亮土のパスプレイ、鋭利きわまるラン、センター荒井基植のスピードは通用した。
だが2トライの荒井は言った。
「正直、あまり通用しなかった。全然、納得できない。(トライは)ただ運がよかっただけ。大学との違いは、コンタクト、接点で、どんな状況でも一人ひとりが前に出てくるところでした」
個々のひたむきなタックルは通用しても、ディフェンス網は通用しなかった。スピードは通用しても、準備したライン攻撃は通用しなかった。コンタクトは通用しても、モールは通用しなかった。固まりとなって前に出られなかった。経験の差といったらそれまでだが、キック処理、ピンチ、チャンスでの状況判断が甘かった。
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