Tリーグが波乱の幕開け。次々と浮かぶ課題にどう向き合っていくか (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by YUTAKA/AFLO SPORT

 第4セットまで2-2で競り合い、最終の第5セットは6-6から始まった。10オールまでいき、最後は鄭が13-11で勝ったが、この爽快な好ゲームは観客の反応が一番大きかった。

「自分は負けてしまったけど、試合はすごく面白かったと思うので、こういう試合を今後も続けていきたい」

 試合後、水谷選手はそう言ったが、まさにその通りだと思った。

 初めて卓球を見に来たファンにどれだけインパクトを与えられるかが重要であり、「面白かった」と言ってもらえることが何よりも大事なことである。こういうゲームを今後、どれだけ見せていけるかがファン拡大のカギになる。

 面白かったのは、ラリーに対する観客の反応だ。

 ラリーが続くと、「おぉー」と感嘆の声が上がり、拍手もサーブで崩して取ったポイントよりも5倍増しになる。プロの試合なので勝つことがもちろん大事だが、白熱したラリーは観客を楽しませるために必須なようだ。

 選手は、Tリーグの試合を大きなプラスに感じたようだ。

 水谷も吉村も「観客の数が多く、すごく緊張した」と試合後に語っていた。世界選手権や五輪と同じように大勢の視線のなか、緊張した状態でプレーできることは、開幕して初めてわかったこと。

 5000人(開幕戦の観客は5624人)を超すファンの前でプレーする経験はそうそうない。そのなかでいかに自分の力を発揮していけるか。吉村はサーブミスを連発するなど明らかに緊張していたが、この経験を積み重ねていくことで大勢のファンのなかでも平常心でプレーできるようになるのではないだろうか。

「世界のレベルの選手と対戦できるのがよかった」

 試合後、張本はそう言ったが、それもTリーグのメリットだ。張本は世界ランク8位で対戦相手の黄鎮廷(ウォン・チュンティン)は世界ランク9位、世界ランク上位選手の試合が普通に実現している。8名の選手が出場したが7名が世界ランク30位内の選手だった。

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