【卓球】福原愛・石川佳純。
日本卓球を変えたふたりの天才少女 (4ページ目)
五輪前に、それを払拭(ふっしょく)する最後のチャンスが今年1月の日本選手権だった。
今年はそういう福原を試すような日本選手権になった。初めての決勝で石川と対決。この試合で福原は、ほとんどすべてのサーブレシーブを強打するという、驚くべき攻撃的戦術に出て石川を圧倒。初挑戦から13年目で、初めて優勝したのである。
「よかった。これで代表3人全員が日本選手権優勝者になった」と村上恭和監督も、福原の優勝を喜んだ。これで福原と石川の間に、ふれにくい話題がなくなり、オリンピックに向かっていく準備が整ったのである。
シンガポールを破った2日後、中国との決勝は0勝3敗で完敗し、銀メダルとなった。しかし福原はシングルス金メダリストの李暁霞(リ・シャオシア)から1ゲームを奪い、石川・平野のダブルスでも、李暁霞、郭躍(クオ・ユエ)のペアから1ゲーム獲って1―3だった。中国は準決勝の韓国戦も3試合3―0で勝っている。中国からゲームを奪うことができたのは、日本だけだったのだ。
そして3人目の代表、平野の役割も見逃すことはできない。武道家を思わせる探究心で、国内では他の選手から尊敬を集める27歳。平野について福原は「私の性格を一番知り尽くしている人」と言い、石川も「頼れる先輩。心強かった」と絶大な信頼を寄せる。
福原、石川という人気者の陰に隠れたが、表彰式では3人の中央に立って表彰台に上がった。これが、福原と石川の、平野に対する敬意の表れだった。
「この3人で、この舞台で戦えて、感動しました」と平野。石川は、メダルをかけてもらった時の感触について、「思っていたより、ずっと重かった。支えてくれた人たちの気持ちとか、いろんなものがいっぱい詰まっているんだなって思いました」と語った。
福原は表彰式後の記者会見で、中国の報道陣から、試合に負けるといつも泣いているのに、今日はなぜ泣かないのかと聞かれると、流暢な中国語で次のように答えた。
「準決勝に勝った時、いっぱい泣いたから、今日は涙が出ないんです」
ソウル五輪で、卓球が正式競技になって24年。日本卓球界の新たな歴史が始まった。
『Sportiva ロンドン五輪・速報&総集編』(2012年8月17日発売)より転載
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