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【ウインターカップ男子】「日本バスケット界の逸材」白谷柱誠ジャック(福大大濠)は、八村塁からのアドバイスを胸に世代トップのスコアラーを目指す (2ページ目)

  • 三上 太●取材・文 text by Mikami Futoshi
  • 加藤誠夫●写真 photo by Kato Yoshio

【多くの経験を積んだ1年のすべてを初のウインターカップで】

ウインターカップでは、より得点にこだわったプレーに意欲を見せる photo by Kato Yoshioウインターカップでは、より得点にこだわったプレーに意欲を見せる photo by Kato Yoshio そんな白谷が12月23日に開幕する、高校バスケット界では「真の日本一を決める大会」とも言われるウインターカップに初めて立つ。

「夏のインターハイに関してはチームとしての成績(ベスト8で敗退)が思うようなものではなく、その後の『U18日清食品トップリーグ』では優勝することができたんですけど、個人としてはどちらの大会の成績も全然納得がいってないんです。ウインターカップは今年最後の全国大会でもあるし、3年生からすれば高校バスケの集大成ですけど、自分からしてもこの1年間に経験したことをすべて出す場でもあると思っているので、全力で挑みたいなって思っています」

 白谷がこの1年で経験してきたことは、実に濃密だ。前記のとおり、6月に日本代表のディベロップメントキャンプに召集され、7月にはウィリアム・ジョーンズカップに出場、そのままインターハイへ。8月には八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)が主催するキャンプ「BLACK SAMURAI 2025」に参加、その後U16日本代表としてU16アジアカップを戦うと、福岡県代表の一員として国民スポーツ大会で優勝し、福岡大附属大濠が出場した「U18日清食品トップリーグ」でも、全試合ではないもののコートに立って、チームの大会連覇に貢献した。

 なかでも「BLACK SAMURAI 2025」で八村から受けたアドバイスは、白谷が次のステップに進むうえで大きな道しるべにもなっている。

「八村さんからはシュートについてのアドバイスを受けたんですけど、そこの部分は自分でも疎かにしていた部分だったんです。具体的に言えば、ボールを持ち上げるときにおでこの後ろまで振りかぶってしまうことと、ジャンプして着地するときにフェイドアウェイ気味になって、真っすぐ下りていないところの2点です。

 たったふたつのポイントですけど、シュートフォームを変えるってことは、選手からしたらあまり居心地がよくないものです。自分も練習当初はシュートもなかなか入らなくて、苦戦したんですけど、U18日清食品トップリーグが終わってから、そのシュートフォームの改革が自分にとっても効果が出てきているんじゃないかと実感できています」

 自ら疎かにしていたところを認め、居心地の悪ささえも受け入れて、ステップアップの歩みを進めようとする。そんな白谷の9カ月を福岡大学附属大濠の片峯聡太コーチも「順調にステップアップしている」と認める。

「夏前は日本代表活動に行っていて、なかなかチームにフィットできていなかったし、ジャック自身のコンディションも、決していい状態ではありませんでした。それでもチームのために頑張ってくれる、いいマインドではあったんですけど、結果的にU16のアジアカップもそうですし、インターハイも、優勝した国スポも、ジャック自身は不完全燃焼で終わってしまった、すごく悔しい感じだったんです。

 でも今は体のキレも、プレーそのものもだいぶ思いきりよくなってきているので、ウインターカップではのびのびと、自由に暴れさせようと思っています。一番はチームが優勝することですけど、ジャック自身のよさもしっかり披露してほしいなと思います」

 白谷本人も、多くの経験を積むことができた収穫はあるものの、同時に、いくつもの悔しい思いをしてきたと認める。むろん何かを取れば、何かを取れないことはある。日本代表活動に参加することで、福岡大学附属大濠のチームメイトと連携が取れなかったことも、そのひとつだ。チーム外での経験がすべてを即プラスにするわけでもない。しかし、マイナスに振れたことをプラスに転じることは、自分の思考次第でできることでもある。

「ケガをしたり、チームに合流できなかったことで自分としての自信や、やるべき役割を明確にできず、得点が1ケタで終わるようなゲームも多かったんです。でも、そうしたゲームがあったからこそ、今でもまだうまくなろうと努力する思考が持てていると思います。その思考を今年最後のウインターカップの舞台で出せたらいいんじゃないかなと思っています」

 注目されようが、されまいが、「ルーキー」と呼ばれるのは、わずか1年でしかない。それは"逸材"であっても同じだ。ルーキーとして最後の全国大会となるウインターカップを、白谷は数年後、どう振り返るだろうか。あの大会がその後の飛躍につながる大会だった――そう言える大会になるだろうか。白谷のバスケット人生は、初のウインターカップを経てもなお、まだ彼の物語の序章にすぎない。

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著者プロフィール

  • 三上 太

    三上 太 (みかみ・ふとし)

    1973年生まれ、山口県出身。2004年からバスケットボールを中心に取材・執筆をする187センチの大型スポーツライター。著書に「高校バスケは頭脳が9割」(東邦出版)、共著に「子どもがバスケを始めたら読む本」、「必勝不敗 能代工バスケットボール部の軌跡1960-2021」(いずれもベースボール・マガジン社)があり、構成として「走らんか! 福岡第一高校・男子バスケットボール部の流儀」(竹書房)がある。

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