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NBA伝説の名選手:マルク・ガソル  多彩なスキルと献身性でグリズリーズの球団史に名を刻んだビッグマン (2ページ目)

  • 秋山裕之●文 text by Akiyama Hiroyuki

【伝説的選手からの気づきと兄・パウとの不思議な縁】

日本開催の2006年世界選手権では兄・パウ(右)とともにスペイン代表で世界一に輝いた photo by Getty Images日本開催の2006年世界選手権では兄・パウ(右)とともにスペイン代表で世界一に輝いた photo by Getty Images 公称211㎝・116㎏のマルクは、レギュラーシーズン通算891試合の出場でキャリア平均14.0得点、7.4リバウンド、3.4アシスト、1.4ブロックを記録。オールスターに3度、オールNBAチームに2度、オールディフェンシブチームにも1度選ばれた。2015年のオールスターゲームでは兄パウ(213㎝・113㎏)とともに先発出場を飾って競演した。

 身体を張った献身性と、高度なバスケットボールIQが光ったディフェンスに加え、マルクはリバウンドも多く奪うことができ、ポストプレーにミッドレンジジャンパー、3ポイントも決めてきた。さらにはチームオフェンスのなかでボールを動かし、パサーとなってチームメイトたちの得点機会を演出するスキルも備わっていた。

 マルクがパサーとしての能力を磨くきっかけになったのは高校時代のこと。当時、NBAの伝説的選手だったジェリー・ウェスト(元レイカーズ)の息子ジョニーとチームメイトだったマルクは、ある日、"レジェンド"から「バスケットボールで最も美しいプレーはパスなんだ」と聞かされ、「あれを機に、バスケットボールをしっかり学んで、パスこそが本当に美しいものなんだと実感した」という。

 エルボーエリアやポストでボールを持ち、味方のカッティングに合わせた絶妙なパスを繰り出してイージーショットを生み出すマルクのプレーは、ジェリー・ウェストの言葉から始まったと言っても過言ではない。

 マルクがグリズリーズで残した通算プレー時間2万5917分やフィールドゴール成功数4341本、フリースロー成功数2701本、5942リバウンド、1135ブロックをはじめ、多くのスタッツ部門で球団最多記録となっており、背番号33は永久欠番になっている。

 また、スペイン代表としても長年プレーし、日本開催の2006年、中国で開催された2019年のFIBAワールドカップ(2006年の大会名称は世界選手権)で金メダル、FIBAユーロバスケット(欧州選手権)でも金メダルに2度輝き、オリンピックでは2008年北京大会、2012年ロンドン大会と決勝でアメリカと戦い、ふたつの銀メダルを獲得してきた。

 NBAでは同じチームで共闘することこそなかったが、パウは弟マルクを誇らしげに語っていた。

「彼はいつも私を倒そうとしてきた。そこで私は自分こそが兄であって、倒すことなんてできないんだとわからせるべく、やってきた。その一方で、私たちは自分たちの国(スペイン)のためにプレーし、多くの(国際)大会でチャンピオンシップを制し、メダルも手に入れてきた。それに、(NBAでは)互いにトレードもされた。おかしなことだ。私たちはトレードされた唯一の兄弟だと思う」

 2024年10月にスペイン・バスケットボール連盟の殿堂入りを飾ったマルクは「すばらしいグループの一員でいられてラッキーでした。偉大な選手たち、お手本になる人たちから学んできました。コーチ陣からはどのようにして競い合えばいいのか、勝利と敗北の向き合い方も教わりました」とキャリアを振り返っていた。

 NBAとスペインで長年活躍してきたマルクは、昨年12月に2025年バスケットボール殿堂入り候補にインターナショナル選手委員会から初ノミネート。今年2月14日に発表された最終候補から落選したものの、来年以降に殿堂入りする可能性は十分あると言っていいだろう。

【Profile】マルク・ガソル(Marc Gasol)/1985年1月29日生まれ、スペイン・バルセロナ出身。2007年NBAドラフト2巡目48位(ロサンゼルス・レイカーズ)
●NBA所属歴:メンフィス・グリズリーズ(2008-09〜2018-19途)―トロント・ラプターズ(2018-19途〜2019-20)―ロサンゼルス・レイカーズ(2020-21)
●NBA王座1回(2019)/最優秀ディフェンス選手賞1回(2013)/オールNBAファーストチーム1回(2015)
●五輪出場歴: 2008年北京大会(2位)、2012年ロンドン大会(2位)、2021年東京大会(6位)

*所属歴以外のシーズン表記は後年(1979-80=1980)

著者プロフィール

  • 秋山裕之

    秋山裕之 (あきやま・ひろゆき)

    フリーランスライター。東京都出身。NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに転身し、現在は主にNBAのライターとして『バスケットボールキング』、『THE DIGEST』、『ダンクシュート』、『月刊バスケットボール』などへ寄稿している。

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