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「私が主役じゃない」32歳のルーキー・桂葵がWリーグでたどり着いた境地とは?

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka

桂葵は異色の道のりを歩んだことでバスケットへの情熱を再確認したという photo by Murakami Shogo桂葵は異色の道のりを歩んだことでバスケットへの情熱を再確認したという photo by Murakami Shogoこの記事に関連する写真を見る

第3回(全3回):32歳のルーキー・桂葵インタビュー

桂葵が32歳でWリーグデビューを果たした。

高校、大学と全国トップレベルの選手として活躍しながら就職を機に競技から離れ、その後3x3(スリーエックススリー/3人制バスケ)の世界で選手、そして経営者として日々過ごし、今季からトヨタ自動車アンテロープス入り。自身にとって10年ぶりの5人制バスケ、しかも最高峰のリーグはどのように感じているのか。

開幕からのこと、そして今後の人生について聞いた。

第1回〉〉〉桂葵が自ら選択してきた人生の決断とその道のり
第2回〉〉〉桂葵がトヨタ自動車にたどり着いた理由

【今はチームが勝てば何でもいいという思考】

――今シーズンのチームのことを聞かせてください。トヨタ自動車は開幕から8連敗をしながら、その後、6連勝をしていますが、今の状況についてはどう感じていますか。

「去年のメンバーが5人移籍して、ルーキーが私を含めて6人いて、1人移籍してきた選手もいるので、本当に新しいチームです。なので、序盤戦はまだチームづくりの段階だったと思いますし、そこからチームとして噛み合ってきて結果にもつながってきました。成長過程をみんなとともに経験している感じなのかなと思います」

――リーグ戦の個人スタッツに目を向けると、平均で10分以上の出場時間を得ています。失礼ながら32歳のルーキーがこれだけコートに立っていることに驚いています。

「そうですね。正直、開幕戦(10月11日の対ENEOSサンフラワーズで20分33秒出場)であんなに出たのは、私もびっくりしました。(開幕前には)練習試合も1回しか参加できなかったんですよ。その時でも多分、6分くらい出させてもらった感じでしたし、あんまり自分の立ち位置はわかっていなくて。

 変な話ですけど、私が主役じゃないというのはすごく思っています。9月から加入した状況もあって、そもそも私は今季のチームづくりの構想にいた選手じゃないはずです。同じポジションの選手たちの調子がいいに越したことはないので、私のプレータイムがなくてもいいくらいには思っていました。でもファウルトラブルなど、何かあった時にちゃんと安心してつなげる選手でありたいなというのは、このトヨタでの自分の役割だと思っています」

――ご自身を客観的に見ているのですね。

「このメンタリティでトップのカテゴリーでやっていていいのかわかりませんが、Wリーグで個人的に何か成し遂げたいことは全然、ないんです。得点を取れない、試合に出られないといった悔しさというのもありません。

 最初に大神(雄子/トヨタ自動車HC)さんがオファーをくださった時に、私のこれからのキャリアを考えてオファーをしていないはずなんですよ。チームが勝つために私が役に立つんじゃないかっていう純粋なバスケ的な視点で獲ってくれたと思うので、私は本当に、チームが勝てば何でもいいんです。それは32歳で入ったからこその、特殊なモチベーションかもしれないです。

 だから、今の私でチームが勝つために役に立てることがあるんだったら、役に立ちたいなという感じですし、この先のことは全然、考えていないです」

――チームの勝利が最優先で、ご自身の今後は未定なんですね。

「3x3はやりたいです。なので、ワールドツアーには何かしらの形で出ていくと思います。ZOOS(※自身がオーナー兼選手として設立した3x3チーム)については、コミュニティとして続けていきます。ただ、ワールドツアーに出場するチームとして、というのはあくまでZOOSのなかのプロジェクトのひとつという感じ。やり方はいろいろなので、関わる人たちが必要な形で存在できればいい。私の話でいうと、許される環境で夏の間は3x3のワールドツアーに出ていき、秋冬も5人制は続けていきたいです」

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著者プロフィール

  • 永塚和志

    永塚和志 (ながつか・かずし)

    スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社)があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社)等の取材構成にも関わっている。

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