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「私が主役じゃない」32歳のルーキー・桂葵がWリーグでたどり着いた境地とは? (2ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka

【選択肢は見つけるものだし、作るもの】

――長い人生というスパンで考えた時に、今後ご自身としてはどうなっていきたいと考えていますか。

「そっちのほうが(より予定が)ないんです。本当はもっとキャリアウーマンみたいな感じで仕事をするつもりだったので、こんなにバスケに熱中するとは思っていなかった。だから、バスケを辞めた後、抜け殻のようになるかもしれないです(笑)。それも人生かなって思っていますし、人生の一部だと思って受け入れたいです。

 アスリートのセカンドキャリアって、永遠のテーマですよね。私は先に社会人をやってからアスリートをやっているからというのもあり、こんな高揚感のある日々は普通じゃないというのも心得ています。競技を終えた時にその反動が来ることも当たり前だと覚悟しています。競技を終えたあとの自分に期待しすぎたり、未来を楽しみにしすぎると、終わったあとの自分に落胆しちゃう気がするので、とにかく今のこの競技人生を楽しむことを考えています」

――そこに価値を見出したわけではないと言いながらも、32歳にしてWリーグデビューを果たした桂選手が及ぼしているかもしれない影響については、どう考えますか。

「選択肢って見つけるものだし、作るもの。だから私がやっていることは、ひとつの選択肢を作って、みんなに共有している状態で、みんなも探してくれたらいいし、なかったら作ればいいと思うんです。

 大事なのは、自分で選ぶこと。選択肢はみんなのものだけど、決断は自分にしかできない。だから私が何か世の中に影響を与えたとしたら、そういう選択肢があることを提示できたことです。だけど、それは別にたいしたことじゃなくて、人が自分の人生を選んでいく、決断を重ねていくことのほうが大きい。

 私がやっていることは別に人のためじゃないし、私のためだし、私自身にとっても自分で決断をしていることが私の人生のなかで大きいポーションを占めている。だから、私を見てインスパイアされた人がいたとしても、それ自体はそんなに大きなことじゃなくて、その先でその人がどういう選択をしていくのかが大事なのかなと思います」

●Profile
桂葵(かつら・あおい)/1992年9月2日生まれ、東京都出身。身長182cm。小学生時代からバスケを始め、桜花学園高、早稲田大時代は全国トップレベルで活躍したが、大学卒業を機に競技生活に区切りをつけ、三菱商事に就職。社業に専念にしていたが、3年のブランクを経て3x3(スリーエックススリー/3人制バスケ)の選手として競技に復帰すると、2022年には3x3チーム運営やコミュニティ運営を中心に展開する「ZOOS」を設立し、自身はZOOS代表兼選手としてプレーする一方、今シーズンからWリーグ・トヨタ自動車アンテロープスに加入。10年ぶりに5人制バスケットで奮闘している。

著者プロフィール

  • 永塚和志

    永塚和志 (ながつか・かずし)

    スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社)があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社)等の取材構成にも関わっている。

【フォト集】女子バスケ・桂葵 Wリーグ32歳のルーキー

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