河村勇輝がGリーグで勝利に貢献 ハッスルヘッドコーチが明かすオフコートでの河村の素顔 (2ページ目)
【河村の真剣度を示す英語にまつわるエピソード】
英語の勉強に関しては、こんなエピソードがある。初めてメンフィスに来たとき、ユウキはビザの手続きのために、まずはカナダのトロントを経由し、その後にオタワに移動して数日を過ごすことになった。飛行機がオタワに着陸すると同時に、ユウキは一緒にいた人たちに「これからはもう日本語は話したくない。僕にはずっと英語を話してほしい」と告げたのだという。そんな話を聞けば、彼がどれだけ英語を真剣に学びたがっていたかが伝わってくると思う。
日本語を話さないだけでなく、「もう日本食を食べるつもりはないから」と言ったんだそうだ。日本食に関しては、私は彼に「食べてかまわないよ」と伝えたのだが(笑)。
メンフィスに到着した頃には、まだ英語を学んでいる途中だったけれど、勉強熱心な本人の姿勢のおかげもあって、今ではもうチームメイト、コーチたちと気楽に話している。もちろんまだ向上の余地はあるけれど、その飲み込みの速さには驚嘆させられている。今後はそれをコート上でも生かしていけるだろう。ディフェンスのコミュニケーション時なども、特に考えることなく言葉が出てくるようになるはずだ。
日本食を食べないとして、ユウキは毎日何を食べているのか? それは私にもわからない(笑)。自身でそれほど料理はしているわけではないと思う。メンフィスではバーベキューが最も有名な料理で、ファストフードの店もたくさんある。ただ、ユウキの身体は引き締まっているから、バーベキューやファストフードばかり食べているわけではないと思う(笑)。食事の点でもしっかりと規律正しくできているのだろう。
ユウキの今季の目標は、毎日、1%でも向上しようと努めていくことだ。彼の練習態度は本当に素晴らしく、頻繁に練習場に来て、コーチの話にもしっかりと耳を傾けている。Gリーグでの初戦の彼はフィールドゴールの精度がもうひとつだったが、その後、すぐに私に「もっといいシュートが打てるようになりたい。向上したい」とテキストメッセージを送ってきた。その気持ちを保ち、試合でも、練習でも、これからも多くのことを学んでいければいい。シュートは絶対に上手になる。
カギになる課題を挙げるとすれば、やはりディフェンスの上達だろう。マッチアップした選手をしっかりとガードできるようになれば、彼はNBAでも長く充実したキャリアを築いていける。ユウキがアメリカでもよりいい選手になっていけるように、私もコーチとしてできることは何でもするつもりだ。
*Gリーグ2試合目となった現地20日のオシオラ・マジック戦では15得点・16アシストのダブダブルで勝利に貢献
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
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