NBA伝説の名選手:ジェイソン・キッド「チームを勝利に導き続けた司令塔の"Mr.トリプルダブル"の万能性」 (2ページ目)

  • 秋山裕之●文 text by Akiyama Hiroyuki

【Mr.トリプルダブルとして試合を支配】

 ポイントガードとしては強靭な肉体の持ち主(公称193㎝・95㎏)だったキッドは、「自分のすべてを捧げて、在籍した球団を勝たせてきた。なかでも大切にしていたのは、チームメイトたちを向上させること」とキャリアを回想している。

 球際の強さも光り、得点、リバウンド、アシストの3部門で2ケタの記録に達するトリプルダブルを計107回(NBA歴代6位)も記録。"Mr.トリプルダブル"の異名を取った。2018年に殿堂入り、2021年にはNBA75周年記念チームにも選ばれた。そんなキッドにとって、最も特筆すべき実績は19シーズンで積み上げたNBA歴代2位の通算1万2091アシストと2684スティールだろう。

 ネッツ時代に共闘したリチャード・ジェファーソンが口にした「点を取らずに彼よりも試合を支配した男はいない」という言葉は、キッドという選手を最も端的に表現している。

 相手選手複数人からマークをされようとトップスピードを保ち、自由自在なボールハンドリングと広い視野から味方の得点機会を数多く演出。数多くのディフェンシブ・リバウンドを奪うことで相手のセカンドチャンスを防ぎ、そのままボールを運んで得点へ持ち込んでチームに勢いをもたらしたほか、攻守でチームを統率する抜群のリーダーシップも見事だった。

 重要な場面では勝負師と化して決勝弾を決めてきた一面も持つ男は、所属チームが変わるなか、キャリア3年目から17年連続でプレーオフに出場し続けてきたことも、チームを勝たせてきた証拠のひとつだ。

 なお、キッドはアメリカ代表でも驚異的な戦績を誇っている。2000年のシドニー五輪、2008年の北京五輪で金メダルを獲得したのをはじめ、キッドが代表のユニフォームを着用して臨んだ試合では、なんと56戦無敗を誇る。

 もちろん、キッドはアメリカのスコアラーではない。あくまで司令塔、ベテランのリーダー格としてこの実績を残してきた。バスケットボールの勝ち方を熟知する男は、コート上のリーダーとして唯一無二の実績を残してきたことは間違いない。

【Profile】ジェイソン・キッド(Jason Kidd)/1973年3月23日、アメリカ・カルフォルニア州生まれ。カリフォルニア大出身。1994年NBAドラフト1巡目2位指名。
●NBA所属歴:ダラス・マーベリックス(1994-95〜96-97途中)→フェニックス・サンズ(96-97途中〜2000-01)→ニュージャージー・ネッツ(01-02〜07-08途中)→マーベリックス(07-08途中〜11-12)→ニューヨーク・ニックス(12-13)
●NBA王座:1回(2011)/新人王(1995)/オールNBAファーストチーム5回(1999〜2002、04)
●主なスタッツリーダー:アシスト王5回(1999〜2001、03、04)
●アメリカ代表歴:2000年シドニー五輪、2008年北京五輪(ともに優勝)
*所属歴以外のシーズン表記は後年(1979-80=1980)

プロフィール

  • 秋山裕之

    秋山裕之 (あきやま・ひろゆき)

    フリーランスライター。東京都出身。NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに転身し、現在は主にNBAのライターとして『バスケットボールキング』、『THE DIGEST』、『ダンクシュート』、『月刊バスケットボール』などへ寄稿している。

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