日本男子バスケがW杯で結果を残せたのはなぜか 田臥勇太と比江島慎が挙げた「めぐり合わせやタイミング」の重要性 (2ページ目)

  • 三上太●取材・文 text by Mikami Futoshi
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

【経験に基づく平常心と、「比江島スイッチ」がマッチした瞬間】

――比江島選手個人に目を向けると、ベネズエラ戦での活躍がありました。あの試合に臨むメンタリティはどのようなものでしたか?

比江島 あの試合は予選の結果と、そこからの目標達成へのプロセスを考えた時、絶対に勝たなければいけない一戦でした。それで逆にみんなが少し気負いすぎていたところがあったのかもしれません。日本として決していいバスケットができていたわけではありませんでした。僕自身も絶対勝たなきゃいけないというマインドで入ってはいたんですけど、慌てることなく、また気負いすぎることもなく、常に平常心でいられた試合だったと思います。

 これまでの経験から、気負ってもいいことがないのはわかっていましたから。前回のワールドカップはまさにそうで、やらなきゃいけないというマインドが強すぎて、まったくいいプレーができなかったんです。そこからはBリーグの試合もそうですが、あまり気負いすぎることはなくなりました。

――そう話す比江島選手を田臥選手は、すごく優しい目でご覧になっていますね。

田臥 年々、彼なりにいろんな経験をしながら、感じているんだろうなということは、そばにいてわかるんです。そのなかでマコが自分自身でどう対処しながら、やっていこうとしているのか、彼なりのアプローチの仕方も近くにいてわかるので、そういう経験が糧になっていっているんだろうなと。それを今回はワールドカップという大舞台で力として発揮した。しかも、その発揮の仕方がとんでもない発揮の仕方だったのは、今までの経験があったからこそだと思います。だから、よかったなと思って、見ていたんです。

――ベネズエラ戦のあとだったでしょうか、比江島選手のことを「かわいくてしょうがない」とコメントをされていたのも、その思いからですか?

田臥 実況の方から「かわいいですか?」と聞かれたので。

比江島 言わされただけでしょう(笑)。

田臥 かわいいだけじゃ済まされないくらいの活躍をしてくれていたので、あの時は「かわいくてしょうがないですよ」と言ったら、ちょっとそこをピックアップされちゃって(笑)。でも、それもマコが活躍してくれたからこそです。僕はただ、普段の思いを口にしただけなので。

――あの場面でその「とんでもない活躍ができた」比江島選手のプレーぶりをどのように見ますか?

田臥 あの大舞台で、しかも大事な場面で活躍できてしまうところも比江島慎だなと思います。ただ、雄太や富樫(勇樹/千葉ジェッツ)が言っていたように、マコならできるということは僕たちも知っていましたし、本人も絶対わかっていたと思います。あの試合だけにフォーカスされがちですけど、日本代表の強化試合や合宿に行ってきたあとに「どうだった?」と聞いたりすると、彼なりに感じるところがあるのがわかるんです。そうした日々を経てのベネズエラ戦だったので、あの活躍は、繰り返しになりますが、積み重ねがちゃんと結果に出たんだと思います。もちろん、さすがだなと思いますよね。

比江島 もともと自信はあったんです。世界だろうがどこだろうが、やれる自信はあった。世界で勝つためには自分の活躍が必要になると信じてやってきたんです。でも、いろいろ考えるところがあったのも事実です。最年長でしたし、周りの状況を見ながらプレーをしていたところもありました。もちろん攻めようと思ったら攻められるというマインドはあったんですけど、自分の性格的にも追い込まれた時というか、ああいう場面にならないとやらない性格でもあるので(笑)。そうしたいろんなものが積み重なって、ベネズエラ戦はやらなきゃいけないというマインドになったんです。

―― 渡邊選手とか富樫選手も「普段からやって」みたいなことを言っていましたが、田臥選手としても同じことを言いたいですか? それとも「いや、マコはこれでいいんじゃない」という感じですか?

田臥 両方ですね(笑)。たぶん本人もわかっていると思います。絶対的にできるものがある以上、あとはマコがやるだけだし、僕は信じています。やはり彼のことはずっと見てきたし、一緒にやってきて、彼のよさ、すごさはよく知っている。そういう意味ではこれからも楽しみです。

比江島 田臥さんはいつもそう言ってくれるんで......はい、頑張ります。

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