富樫勇樹が考えるバスケ男子日本代表の課題 自身は「リーダーシップはとっていかなければいけない」 (3ページ目)
【「死のグループ」を戦うことで、未来につなげる】
――日本と同じグループEにはドイツ、フィンランド、オーストラリアがいます。それぞれどのような印象を持っていて、どう戦っていきたいと考えていますか? まずはドイツから。
「印象としては、やはりポイントガードのデニス・シュルーダー選手(NBA:トロント・ラプターズ)がメインのチームです。彼に好き勝手にやられたら、シューターはノーマークになるし、ゴール近辺のビッグマンにロブバスも飛ぶし、もちろん彼のレイアップシュートにもなります。だからこそ彼を止めなければいけないと考えています」
――ポジションで考えるとマッチアップは富樫選手になりませんか?
「そうですね。その時間帯はあると思いますし、馬場(雄大)選手をつける可能性もあると思います。今はいろんなオプションを探っている段階なので、どういうディフェンスになってもいいように、チームとしてしっかり準備していきたいですね」
――フィンランドはいかがですか? ラウリー・マルカネン選手(NBA:ユタ・ジャズ)がいます。
「ユーロバスケを何試合か見たのですが、こんなにも強いのかという印象は持っています。強豪と呼ばれる国を相手に引けをとらない試合をしていて、3ポイントシュートもバランスよく決めてきます。もちろんマルカネン選手がエースとして30点も40点も取っている試合もあるなかで、です。さらにいえばヨーロッパ特有というか、バスケIQが高く、シュート力もあり、フィジカルも強い。ファンのみなさんが想像しているよりも強いと思っています」
――最終戦はオーストラリアが相手です。アジア予選でも対戦していますが(ワールドカップ出場をかけた大陸予選ではオセアニアもアジアに含まれる)、NBAに参戦している選手が加わるとまた違ったチームになるでしょう。
「オーストラリアは本当に経験のあるチームで、しかも今大会のメインどころの選手は、近年それほど変わっていないと思うので、経験値を含めて抜けているチームだと思います。正直なところ、僕はこのグループEでオーストラリアが一番強いと思っているんです。ただ、そのオーストラリアが3試合目というのは一番よかったのではないかとは思っています」
――どういうことでしょうか?
「選手としては一番戦いたいチームが初戦にきてほしいものです。初戦は特に準備する時間があるからです。逆に一番強いと思われるチームが最初にくると、そのための準備をどこまでやって、チャンスがあるかもしれない相手との試合をどうするかまで考えなければいけません。そう考えると、今回の対戦順は日本にとってもよかったのではないかと思っています」
――まずはドイツ戦に向けてしっかりと準備ですね。
「はい。ワールドカップに向けた準備は、ほとんどがドイツ戦に向けてのものになるはずです。そこで勝つことによって、その流れに乗って、フィンランド戦、オーストラリア戦に入っていきたいと考えています」
――そうしてアジア1位になれば、パリ五輪の出場権を得られます。来年の五輪への思いもあるのでしょうか?
「もう一度オリンピックに出たいという気持ちはあります。僕自身がここまで長い期間バスケをやってきて、日本代表が世界レベルの大会に出ているところをあまり見ないで育ってきたこともあるので、やはり今、頑張っている子どもたちに日本が世界レベルの大会で戦っているところを見せたいという思いもあります。
今大会は「アジア1位」という目標を掲げていますが、いずれは自信を持って、ワールドカップで「メダルを獲ることが目標」と言えるようなチームを作っていかなければいけません。そのためにもワールドカップとオリンピックに常に出続けて、経験を重ねて、肌で感じて、変化していくことを繰り返して、日本は強くなっていくと思います。
そこを取りこぼさないことは、日本代表でプレーしているひとりとしての責任だと思います。個人としての思いもありますが、日本の男子バスケの未来のためにも、ワールドカップで勝って、来年のパリオリンピックの出場権を何としても手にしたいと思っています」
Profile
富樫勇樹(とがし ゆうき)
1993年7月30日生まれ、新潟県出身。
小学1年生からミニバスを始め、中学では監督としてチームを率いる父親・英樹さんのもと、3年時に全国大会で優勝を果たす。アメリカの高校に進学し、卒業後は日本に戻り、bjリーグの秋田ノーザンハピネッツに入団。NBA挑戦などを経て、千葉ジェッツ(現:千葉ジェッツふなばし)で活躍中。日本代表としても今大会キャプテンを務める。
ポジション=ポイントガード。身長167cm、体重65kg。
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