宇都宮ブレックスが優勝でMVPの比江島慎は涙。「自信をなくした夏」を経て本領を発揮 (4ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka

我慢強く、粘り強く

 決勝進出のかかったセミファイナル、川崎との第2戦。拮抗する「我慢比べ」を制したのは宇都宮で、試合後に古参選手である渡邉裕規は、我慢と不利な状況でも前を向き続けられたことが、CSでの快進撃の理由とした。

「今日の試合でも、相手の勢いの乗るようなプレーが何本も続いて、投げ出そうと思えば投げ出せる展開は何度もありましたけども、メンバーは変わりながら自分たちもびっくりするくらい団結力が出ています。(新たな選手たちが加わって)1年経っていないなかでここまでの仕上がりに持ってこられたのは、本当にすばらしいなと思います」

 その「我慢強さ」は、6試合のスタッツにも表れている。例えば端的にミスの数と言っていいターンオーバーの数。レギュラーシーズンで平均10.9だった同軍のそれはポストシーズンでわずか7.7。ディフェンスなどのプレー強度が格段に上がるポストシーズンでのこの数字は驚きだ。また、相手のターンオーバーからの得点が平均15.7(相手は6.5)と、このあたりからも宇都宮の粘り強さ、しつこさが見えてくる。

 安齋HCも渡邉同様、川崎との第2戦のあと、高揚した口ぶりで自身の選手たちをこう称えた。

「チャンピオンシップに入る前からですけど、うちの選手の、やるべきことをやろうとする遂行力は、自分で指揮を執っていてもすごいなと思いました」

 宇都宮に敗れはしたものの、琉球もリーグ史に残るシーズンを送った。コロナ禍のために試合数はやや少なくなってしまったものの、途中、Bリーグ記録となる20連勝を記録。レギュラーシーズンの勝率8割7分5厘も、やはり史上1位となる数字だった。西地区のチームとしても初めてBリーグファイナルの舞台に足を踏み入れた。様々な「初」をマークした、特筆すべき1年だった。

 ファイナル直前にチームのエースポイントガード・並里成がコンディション不良により欠場した(宇都宮も喜多川修平を同様の理由で欠いた)ことは、言うまでもなく痛かった。しかしシリーズ終了後、琉球の桶谷大HCは宇都宮の「乗せないように、乗せないように」という流れに「してやられた」とし、そこを「経験の差」と振り返った。

 それでも桶谷HCは「清々しい」心境だとして顔を上げ、こう言葉を紡いだ。

「結果こそ出なかったですが、ここに立たせてもらって『ありがとうございます』という(気持ちです)。これからこのファイナルの経験がキングスにとってかけがえのないものになると思うので、またここに戻ってきたいと思います」

 新型コロナウイルスによる影響も、まだまだ先が見とおせない状況にはあるが、宇都宮のCSでの快進撃や琉球の躍進を見ると、来シーズン以降のBリーグが、さらに面白くなっていきそうな予感がする。

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