宇都宮ブレックスが優勝でMVPの比江島慎は涙。「自信をなくした夏」を経て本領を発揮

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka

比江島を中心に見事な快進撃

 比江島が光り輝いたのは、ファイナルだけではなかった。宇都宮はクォーターファイナルで千葉、そしてセミファイナルでは川崎という東地区上位2チームを、それぞれアウェーで打ち破ったが、比江島はいずれの試合でも確たる仕事をした。レギュラーシーズンでは平均11.5得点、3.7アシストだった男は、CSで同18.7点、5.2アシストとギアを上げ、ワイルドカードでの出場だったチームの快進撃を演出した。

 2019-20年に宇都宮に加入した比江島にとっては、Bリーグで初めての優勝となった。2018-19に挑戦したNBLブレスベン・ブレッツや2019年夏にニューオリンズ・ペリカンズの一員として参加したNBAサマーリーグでは力量を発揮できず、辛酸を味わった。日本代表でも、八村塁(ワシントン・ウィザーズ)や渡邉雄太(トロント・ラプターズ)らが加入してきたこともあって、彼の持ち味は影を潜めた。宇都宮に来てからも激しいディフェンスと自己犠牲を是とするチームへのフィットに苦しんだ。

 そして、昨季はファイナルで最終第3戦まで持ち込みながら千葉に敗れ、比江島は3試合で平均6.7点と封じられ、敗因とされた。

 今回は、自らの手で勝ち取った優勝であり、様々な過去が脳裏に去来したのか、涙がとめどなくあふれた。

「ひとつの夢でもあったので長い道のりでしたけど、やってきたことは間違っていなかったことを証明できましたし、本当に今日は、優勝を分かち合いたいです」

 コート上での優勝インタビューで、比江島はいつもよりも少しだけ感情的な声のトーンでそう話した。

会見でも、平坦ではなかったここまでの道のりを振り返った。

「ブレックスに移籍してからも戦術理解に時間がかかりましたが、それでもこの1年、成長を感じられましたし、チームメイトやスタッフが自分を信じてくれたおかげもあった。それを結果で証明できたのがうれしいです」

 2019年、サマーリーグで結果を出せなかった時には「自分に実力がないだけじゃないですか」と言い、W杯後はサマーリーグの出来と併せて「自信をなくした夏でした」と、自虐的な言葉を残した。

 洛南高校、青山学院大学で全国一を味わい、Bリーグ以前のNBL時代にはアイシン・シーホース(現・シーホース三河)で頂点に立った。しかしBリーグが始まってからは優勝が遠く、上述のとおり海外挑戦等で苦汁を味わってきた。

 だが、比江島はそうした澱のようなものをすべて吐き出すかのように、本領を発揮。川崎とのセミファイナルでは、自身が「ペイントにアタックすれば何かが起こる」と、自身の役割が明確となり吹っきれた様子だった。その言葉どおり、ファイナルでもリングをアタックし続けた。そしてその姿勢が、優勝とCSのMVPという形で報われたのだ。

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