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【NBA】同性愛者ジェイソン・コリンズが伝えたいメッセージ (2ページ目)

  • 宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko photo by Getty Images

「歴史的な瞬間なのに、これだけ?」と、物足りなさを表した記者もいたが、ひとりの選手としてコリンズを迎える自然な反応だったことは、むしろ素晴らしいことだった。

 試合前、100人近いメディアを前に記者会見を開いたコリンズは、「聖戦に臨む十字軍の兵士のような気分か?」と問われると、苦笑いを浮かべて、「いや、僕がなるのは、堅実なバスケットボール選手だ。歴史だとか、そういったことは考えず、自分の目の前にある仕事に集中するだけだ」と答えた。ゲイであることを公表し、NBAに迎え入れられることが社会的にどれだけの意味を持つのか――。それを理解した上でコリンズが求めたのは、主義・主張のためにNBAでプレイすることではなく、ひとりの選手としてチームのために戦うことだった。

 ネッツと契約した際、コリンズがカミングアウト前にいくつかのNBAチームでプレイしていたこともプラスとなった。ネッツのヘッドコーチであるジェイソン・キッドは2001年~2008年のニュージャージー・ネッツ時代、ベテランのポール・ピアースやケビン・ガーネットは2012年~2013年のボストン・セルティックス時代のチームメイト。そして、ネッツの主力選手であるデロン・ウィリアムスも、コリンズの双子の弟・ジャロン(2年前にNBAを引退)がユタ・ジャズ時代にチームメイトだったので、以前から付き合いがあった。そんな関係性がすでに出来上がっていたからこそ、まるで家族の中に帰ってきたような雰囲気で、自然と、NBA選手に戻ることができたという。

 コリンズはもともと、派手なプレイをする中心選手ではなく、チームメイトのためにスクリーンをかけ、ディフェンスをしてリバウンドを取る「裏方」の選手だ。だから裏方として、チームメイトが少しでも楽に得点できるようにプレイし、手助けすることに誇りを持っている。

 レイカーズ戦でのコリンズは10分37秒出場し、シュートはわずか1本。しかも、そのシュートも外して無得点に終わった。だが、その代わりにリバウンドを2本取り、いくつものスクリーンをかけ、6つのファウルのうち5つを使い切った。その結果、ネッツは1度もレイカーズにリードを許すことなく、108対102で勝利を収めた。

「一番大事なことは、チームが勝ったことだ。僕が得点するかどうかは、どうでもいい。チームが勝つために、チームメイトの仕事が少しでも簡単になるように、それだけを考えている」

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