【ラグビー】シーズン終了も、新しい世界で疾走し続ける五郎丸歩

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu  齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 苛烈、かつ豊潤なシーズンが終わる。かのラグビーのワールドカップ(W杯)イングランド大会で活躍した五郎丸歩(ヤマハ発動機)はトップリーグでも、空前絶後のラグビーブームをけん引した。25日のリーグ年間表彰式。ラグビー界の枠を越えたスターは、柔らかい笑みを浮かべた。言葉に安ど感が漂う。

「結果が一番、大事だと思います。タイトルを獲ったことは非常に大きいですね。昨年の4月から肉体的にも精神的にもかなりハードでしたけど、ワールドカップでここまで日本の状況が変われば、やってよかったなと思います」

トップリーグ年間表彰式で、得点王、特別賞など個人表彰された五郎丸歩(左)トップリーグ年間表彰式で、得点王、特別賞など個人表彰された五郎丸歩(左)

  特にW杯後はメディアやイベントに引っ張りだこだった。でも、五郎丸は練習量を絶対、落とさなかった。チームは3位にとどまったが、ベストフィフティーン、特別賞(通算1000得点達成)のほか、3季ぶり3度目の得点王(83得点=2トライ、23ゴール、9ペナルティゴール)に輝いた。キック成功率は84.21%だった。

 想像を絶する過密日程だったのだろう。グラウンド外のしんどさは? と聞けば、五郎丸は「ありますよ、もちろん」と漏らした。

「タイトルを獲らなくちゃいけないというプレッシャーも自分にかけていました。最初はね、(メディアに)『出てくれてありがとう』でしたけど、それがだんだん『アイツ、いつまで出ているんだ』って、こう、いろいろありますから。要は自分が何をしたいかですね」

 五郎丸は"こう"と言いながら、右手を上下に揺らした。29歳はいつも、ラグビー人気アップを心掛けてきた。だから、家族との時間を犠牲にしてまで、テレビやイベントに顔を出してきた。でも、やっかみや非難はどこにでもある。

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