【F1】角田裕毅のマシンが宙を舞った 原因は「フェルスタッペンのタイムに肉薄したい」という思い (2ページ目)
【手段が目標になってしまった】
予選Q3でマックス・フェルスタッペンに肉薄する好タイムを刻みたい──というのは、今の角田が一番に掲げている「目標」だ。今回は得意のイモラで、金曜からフェルスタッペンとの差が小さかっただけに、その期待も大きかった。
そのためにQ3に2セットの新品タイヤを残し、Q3で2回のアタックを行なって万全のラップを決めたかった。だから、Q1から力が入ってしまった。
しかし本当に必要なのは、マシンの理解を深めて限界までプッシュできるようにすることだ。
Q3に2セット残すというのは、あくまでその「目標」を達成するための「手段」でしかない。それなのに、いつの間にかその「手段」が「目標」になってしまい、一番大切な本来の目標を見失ってしまっていた。
それが、あのミスが起きてしまった最大の理由だったと言うべきだろう。
金曜からFP3まではマシンのフィーリングが思わしくなく、予選に向けて金曜の方向性に戻す大きなセッティング変更をしなければならなかったことも、理由のひとつ。
そしてこのエミリア・ロマーニャGPで楽しみにしていた、フェルスタッペンと同スペックのマシンで彼から多くを学ぶことができなかったのも、理由のひとつ。
新型フロアとサイドポッドは投入されたものの、角田のマシンにはスリムな旧型ノーズと旧型フロントウイングが装着されていた。マイアミGPでフェルスタッペンがフロントウイングを壊したため、スペアが足りなくなったからだ。
こうしたさまざまな背景があったとはいえ、ミスはミスであり、それをすぐさま認めて自分と向き合うことができるのは、角田の強さのひとつでもある。
著者プロフィール
米家峰起 (よねや・みねおき)
F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。
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