あれから20年...加藤大治郎は「この先も現れない唯一無二の存在」 世界王者に最も近かった天才日本人ライダーが次世代に遺したもの

  • 西村 章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • photo by Nishimura Akira

●圧倒的スピードとほんわかした性格

 加藤大治郎という存在の大きさは、たとえば彼と同世代の、特に日本人ライダーたちについて何かを語る際には、結局のところその合わせ鏡として加藤を語っているような格好に必ずなってしまうところにも、よく表れている。

 また、26歳の若さで才能の全貌を明らかにしないまま没しただけに、後世のライダーたちにとって彼の存在は手の届かない遠い目標として認識されている感もある。

RC211V初乗りで2位に入った2002年チェコGPRC211V初乗りで2位に入った2002年チェコGPこの記事に関連する写真を見る 現役選手たちのなかでは、MotoGPクラスに参戦する31歳の中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)が、おそらく、加藤と直接の交流を経験している最後の世代だろう。

 中排気量のMoto2に参戦する22歳の小椋藍(IDEMITSU Honda Team Asia)たちの世代になると、加藤が逝去した2003年はまだ幼児で、彼らはビデオ映像などでしか加藤の姿を知らない。

 中上は、小学生の時に加藤からレーシングブーツをもらい、それを今でも宝物として大事に保存している。

「9歳の時にバイク雑誌の企画で日本GPのパドックツアーに行って、そこでライダーを直撃してゲームに勝ったら何かをもらえる、というイベントがあったんです。

 それで大治郎さんのライダー控え室で会って話をして、ゲームに勝って、『じゃあ、ちょうど今使ってたこのブーツをあげるよ』ということで、それにサインをしてもらいました」

 中上の記憶には、250cc時代のレースで圧倒的な強さと速さを見せていた加藤の姿が鮮明に焼きついているという。

「接戦も数回あったと思うけど、いつも大治郎さんがぶっちぎりで、後ろを何秒も圧倒的に突き放して優勝していた記憶がすごくあります。

 あとは、ヘルメットを脱いだ時のほんわかした印象との落差がすごい。ヒマがあればどこでも寝ちゃうという話も聞いていて、そんなところにも魅力を感じて惹きこまれました」

2002年第11戦ポルトガルGP2002年第11戦ポルトガルGPこの記事に関連する写真を見る

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