レッドブルが完全制圧、メルセデスが復調しフェラーリが失速した2022年のF1。中野信治が「3強」の戦いを総括する (2ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi

【レッドブルに死角なし】

 一方、2013年以来のコンストラクターズタイトルを獲得したレッドブルには死角が見当たりません。シーズン終盤のブラジルGPで、マックス・フェルスタッペンが「(チームメイトの)セルジオ・ペレスにポジションを譲れ」というチームオーダーを無視したことが話題を集めました。

中野信治氏 photo by Murakami Shogo中野信治氏 photo by Murakami Shogoこの記事に関連する写真を見る ドライバーズランキング2位の座をフェラーリのシャルル・ルクレールと争っていたペレスはレース後にかなり感情的になっていましたが、この事件はレッドブルとフェルスタッペンにとって連覇の火種にはならないと思います。

 なぜかといえば、フェルスタッペンとペレスのパフォーマンスに圧倒的な差があるからです。ふたりがいつも近いところで争っていたら火種になりますが、そうじゃない。だからペレスもレース後にあれだけフェルスタッペンに対して怒っていたのに、すぐにコメントがトーンダウンしました。

 マシンを降りて冷静になると、ペレス本人もフェルスタッペンとの間にある実力差を認めざるを得ません。ペレスは何も言えない状況に追い込まれてしまった。チームだってもう少しフェルスタッペンとの差を縮めてくれないと、ペレスを擁護したくてもできません。

 極論すると、あれだけ強いフェルスタッペンが言っているんだから、まあ仕方ないだろうと。レッドブルはチームとしてそういう判断をしたということだと思います。

 レッドブルにとって、フェルスタッペンとペレスとのラインナップは理想的です。かつて最強を誇ったメルセデスは、ルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタス(現・アルファロメオ)がコンビを組んでいましたが、両者の間に力の差があったからこそ、エースドライバーのハミルトンが一番落ち着いた精神状態でレースに臨み、常に自分のやりたいようにできました。今のレッドブルはまさに同じような状況です。

 そうでなければ、フェルスタッペンは年間15勝もして、あんなに力強い走りはできません。フェラーリ時代のミハエル・シューマッハやマクラーレン・ホンダ時代の全盛期のアイルトン・セナもそうですが、チーム内でナンバー1ドライバーがやりたいようにやれる環境がないと、圧倒的なパフォーマンスは発揮できないと思います。

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