レッドブルが完全制圧、メルセデスが復調しフェラーリが失速した2022年のF1。中野信治が「3強」の戦いを総括する (3ページ目)
【メルセデスのマネジメントに注目】
チーム側に立っても、ふたりを同時にプロデュースするのは困難。特にタイトルを狙うトップチームでふたりのドライバーをコントロールするのは、そもそも不可能だと思います。それをやろうとして失敗したのが2022年のフェラーリです。
シューマッハ時代のフェラーリで強烈なリーダーシップを発揮し、1999〜2004年のコンストラクターズタイトル6連覇の立役者ジャン・トッドは、ある意味、監督以上の存在でした。そのトッドでさえ、結局はシューマッハひとりしかプロデュースできなかった。
トップチームに関しては、やはりひとりのドライバーを優先する戦いをしないと成り立たない。それはF1の長い歴史が証明しています。
その意味では2023年、メルセデスにドライバーのマネジメントの部分で問題が勃発すると僕は見ています。マシンがまとまってきたメルセデスは強くなると確信していますが、常に優勝を狙える状況になると、ハミルトンとラッセルの関係がギクシャクしてくると予想します。
その部分をメルセデスのトト・ウルフ代表がどうやってコントロールし、ドライバーをマネジメントしていくのか。大きな見どころですし、ウルフ代表は手腕を問われるシーズンになると思っています。
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【プロフィール】
中野信治 なかの・しんじ
1971年、大阪府生まれ。F1、アメリカのCARTおよびインディカー、ルマン24時間レースなどの国際舞台で長く活躍。現在は豊富な経験を活かし、ホンダ・レーシングスクール鈴鹿(前・鈴鹿サーキットレーシングスクール)副校長として若手ドライバーの育成を行なっている。また、DAZN(ダゾーン)のF1中継や2021年からスタートしたF1の番組『WEDNESDAY F1 TIME』の解説を担当している。
【著者プロフィール】
川原田 剛 かわらだ・つよし
フリーライター。1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』を始め、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手掛けている。
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