角田裕毅、待ちに待った鈴鹿F1デビュー。世界一走り込んだサーキットは「隅々まで知っている」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

初の鈴鹿は3倍速の早送り

 日本に帰る前から一番に挙げていた好物のもつ鍋を、帰国したその日の夜に食べた。そしてガスリーをはじめほとんどのドライバーが新幹線で鈴鹿へと移動するのに対し、角田はホンダ・シビックTYPE-Rを自らドライブして鈴鹿へ移動し、忙しいなかでも自分の時間も満喫した。鈴鹿では4年前までの馴染みの焼肉店を訪れ、お気に入りの厚切り塩タンをアルファタウリのエンジニアたちとともに堪能した。

 リラックスできているのは、そんないい意味で楽観的なところも影響しているのだろう。

「最初は新幹線で来る予定だったんですけど、自分のひとりの時間・空間がほしいなと思って、クルマで来ました。実際にはトレーナーとふたりでしたけどね。ゆっくりサービスエリアに寄りながらふたりで半分ずつくらい運転して、海老名のメロンパンも食べてきました(笑)。そういう日本っぽいことをしながらゆっくり来たいなと思って」

 鈴鹿はドライバーの腕が問われる世界屈指のドライバーズサーキット。その鈴鹿で角田は2018年まで参戦していたFIA F4、そしてJAF F4のコースレコードを保持しており、それは今も破られてはいない。

 とはいえ、それは1分27秒064のF1よりも34秒から40秒も遅いタイムだ。F1で走ればまったくの別世界が待っている。角田はそれを体験するのをF1デビューが決まった時から楽しみだと言い続けてきた。

 シミュレーターでトライした鈴鹿は、「2倍速か3倍速の早送りのよう」だったという。

「僕にとって鈴鹿は世界中で一番走り込んだサーキットですし、思い出深い場所です。本当に何千周、何万周走ったかわかりません。なのでコースのキャラクターだったり、ひとつひとつのコーナーの特性だったり、どこにバンプがあったり挙動が乱れやすかったりという、サーキットの隅々まで知っていて詳しい情報を持っています。

 でも、過去の経験があるからといって甘くは見ていませんし、1周目からタイムを決めにいくようなことは絶対にできない。いつものレースと同じアプローチでビルドアップして、徐々にペースを上げていきたいなと思っています」

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