ホンダが駆け抜けた7年間の集大成。きっとまたF1に戻ってくる、挑戦はまだ終わらない (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

未来のために特許を出願

「逆に相手は、パワーを上げて少し回生量が落ちたように見えました。これまでは余裕をかまされていましたが、それを見て『そろそろ限界も見えてきているかな』と感じました。そんな2021年シーズンの開幕でした」

 パワーユニットのコンパクト化に加え、レッドブルはマシン開発制限が敷かれるなかでトークンを使ってギアボックスの後部を絞り込み、RB16Bのリアエンドを大幅に変更した。2020年に苦しんだリアの不安定さをしっかりと打ち消して、メルセデスAMGを上回るマシンを作り上げてきた。

 そこからはメルセデスAMGとレッドブルによる一進一退のシーズンが続いた。序盤戦はレッドブル優位だったがポルトガル(第3戦)とスペイン(第4戦)ではメルセデスAMGが逆襲。市街地戦ではメルセデスAMGが苦戦を強いられ、アップデートを前倒し投入したレッドブルが5連勝を飾った。

 イギリスGP(第10戦)では息を呑むような接触劇ばかりに焦点が向けられたが、ホンダが危機感を覚えていたのはメルセデスAMGの性能向上だった。

 久々となる空力パッケージのアップデートに加えて、回生量の増加が見られた。低速域でのトルクが豊かで、ストレート前半の加速が速い。これを受けてホンダは、新型エナジーストア(ES/バッテリー)を投入し、対抗してみせた。

「イギリスGPあたりで回生量の優位がなくなったということを感じて、ミルトンキーンズでずっと開発していた新型ESを投入しました」

 従来とまったく異なるバッテリーセルを使い、F1で使用する高電圧での高速充電・放電の連続性能を高めたエナジーストアであり、特許出願も行なった。

「普通はレースでは特許は出しません。何をやっているのか、ライバルにバレてしまいますから。しかし、ホンダが進むべき新しい技術・新しい未来のために特許も出願して戦っています。ここも新しい未来のためにレースを実証実験の場として進めようとしていた部分にほかなりません」(浅木泰昭開発責任者)

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