ホンダが駆け抜けた7年間の集大成。きっとまたF1に戻ってくる、挑戦はまだ終わらない (5ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

一番じゃなきゃダメなのか?

 それでも11秒の差は縮まらず、レースはいよいよ残り10周を切る。打つ手はもう尽きたかに思われた。そんな矢先の53周目、ニコラス・ラティフィ(ウィリアムズ)のクラッシュでセーフティカーが入り、すべては大きくひっくり返った。

 レースは残り1周で再開となり、フェルスタッペンは右脚を痙攣させながらもソフトタイヤの威力を生かしてハミルトンをパス。長い2本のバックストレートでも抑えきって勝利を掴み獲り、劇的な大逆転劇で2021年のワールドチャンピオンへと輝いた。最後まであきらめることなく全力で戦い続けたからこそ、掴み獲ることができた栄光だった。

 そのレースディレクションには賛否が巻き起こったが、フェルスタッペンとレッドブル・ホンダがこの1年を通してここまですばらしい戦いを繰り広げてきたことは、紛れもない事実だ。その戦いの末にチャンピオンの称号があろうとなかろうと、彼らが作り上げてきたレース、マシン、そしてパワーユニットのすばらしさは変わらない。その努力も揺るがない。

「以前に『一番じゃなきゃダメなんですか?』という言葉がありましたが、その一番を目指す、そこに向かって努力する、みんなで努力するという過程が重要なのではないかと思っています。結果として一番にならなければダメということよりも、一番を目指して本当に本気でやったかどうかが自分たちの肥やしになると思います」

 すべての戦いを終えた田辺テクニカルディレクターは、噛み締めるように語った。この1年間、1戦1戦を悔いのないように全力を出しきって戦いたいと言い続けてきた田辺テクニカルディレクターにとっても、まさに一番を目指してやりきったからこそ言える言葉だった。

「今回、ドライバーズ選手権は獲れましたが、コンストラクターズ選手権は獲れませんでした。しかし我々は本気ですべてのレースで勝つために毎回サーキットに来て、HRD Sakura、HRD MKからサポートしてきて、全員が本気で勝ちにこだわってやってきたんです。たとえ両タイトルともに獲れなかったとしても、その努力とこだわりは我々のメンバーが仕事をしていくうえで非常に貴重な経験になるでしょうし、将来に大きく生きるものだと思っています」

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