ホンダにとってアルファタウリは特別。八郷社長「一番うれしかったのはイタリアGP」。救ってくれた恩義は絶対に忘れない (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

開幕前テストで強い手応え

 しかし、現場で指揮を執る田辺豊治テクニカルディレクターや山本雅史マネージングディレクターも、ことあるごとにトロロッソへの感謝を口にする。

 ホンダがF1に残ることができたのも、レッドブルとタッグを組むことができたのも、そして頂点へと駆け上がることができたのも、すべてはトロロッソが手を差し伸べてくれたから----。

 F1を愛し、どうしてもF1への挑戦を続けたかった者たちは、そのことが痛いほどわかっている。だからトロロッソへの感謝を常に忘れない。八郷社長もそのひとりだった。

 2020年、ホンダは開幕前テストで強い手応えを感じていた。

 目標としていたメルセデスAMGはトラブルが散発し、パワーでも回生量でもホンダは同等かそれ以上の勝負ができると分析していた。

 しかし、新型コロナウイルスの影響で開幕は延期となり、7月の開幕直前になってMGU-H(※)のエネルギーマネジメントについての規定が技術指令書で変更され、ホンダが目論んでいた回生量を増やす手法は封じられた。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heatの略。排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

 開発責任者の浅木泰昭はこう振り返る。

「2019年の最後には、メルセデスAMGもそろそろ頭打ちで、来年こそは戦えるんじゃないかと思っていました。しかしフタを開けてみると、メルセデスAMGはまだ余力を持っていたことが明らかになりました。

 回生量についても、オーストラリアGPの時点では認められていた制御がオーストリアGPの直前に急に禁止され、回生量がガックリと下がってしまいました。パワーも負けているし、回生量も戦えないということで、非常に苦しいシーズンになってしまいました」

 レッドブルの車体もナンバーワンとは言いがたく、どのサーキットでもメルセデスAMGに差をつけられた。メルセデスAMGがタイヤに苦しんだ70周年GPで勝利を拾うのが精一杯で、レッドブルは最終戦アブダビを制して2勝にとどまった。

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