ホンダにとってアルファタウリは特別。八郷社長「一番うれしかったのはイタリアGP」。救ってくれた恩義は絶対に忘れない (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

苦楽をともにしてきた同志

「レースをリードして、コーナーごとに自分の走りに集中して走るという、GP2時代のことを思い出していたよ。最後の数周はミラーに写る彼(サインツ)の姿がどんどん大きくなってきたなかで、僕はターン1出口のトラクションがかなり苦しいのはわかっていた。

 彼が仕掛けてくるとしたらDRS(※)を使ってターン1で来るか、第2シケインだと思っていた。だから、1.5秒差になるまで僕はエネルギーをセーブしておいて、彼が仕掛けて来たらそれを使ってディフェンスしようと備えていたんだ。最終ラップにそれを使い果たしたけど、なんとか彼を抑え切ることができてよかった」

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

 ホンダにとっても、ガスリーはF1昇格前のスーパーフォーミュラ時代から苦楽をともにしてきた同志。2018年にトロロッソと組み、「僕らは戦えるんだ」と自信を与えてくれたのも、ガスリーだった。

 そしてホンダは、カスタマー供給を行なうほかのパワーユニットマニュファクチャラーとは違い、レッドブルとアルファタウリの両方にまったく同じ陣容でパワーユニットを運用している。エンジニアの数も、ファクトリーでのバックアップ体制も、そして現場でのセッティングやレース中のモード変更もだ。

 つまり、モードの選択肢が少ないカスタマーチームとは違い、ホンダはアルファタウリにレッドブルと同じレベルの細やかなパワーユニット運用を行なえる。だから、守る時には守る、攻める時には限界ギリギリまで攻める、ということができる。

 2019年ブラジルGPで最終ラップにガスリーがハミルトンのメルセデスAMGを抑えきるどころか引き離して2位表彰台を獲得したのも、雨の2019年ドイツGPでダニール・クビアトが3位表彰台を獲得できたのも、そんなホンダの姿勢があったからでもある。

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