ホンダにとってアルファタウリは特別。八郷社長「一番うれしかったのはイタリアGP」。救ってくれた恩義は絶対に忘れない (5ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

ホンダにとって最高のシーン

 ホンダにとって、アルファタウリは特別だった。

 タイトル争いの同志はレッドブル。アルファタウリは表彰台も難しい中堅チーム。しかしそれでも、ホンダはトロロッソが救ってくれた恩義を絶対に忘れず、態度で示し続けた。

 だからこそ、八郷社長は「一番うれしかったのはイタリアGP」と寸分の迷いもなく言いきった。

 イタリアGPで劇的な初勝利を挙げたガスリーが、それまでの長く苦しい時間を噛み締めるかのように表彰台でひとり座り込んでいる姿は、ガスリーとアルファタウリにとってだけでなく、ホンダにとっても最高のシーンだった。

「チームとパワーユニットマニュファクチャラーが組んで仕事をするとなると、昔から往々にして『クルマを速くするにはパワーユニットはこうしろ』といったつき合い方になるなか、アルファタウリはとにかくオープンにつき合ってきてくれました。

『ホンダは何がしたいのか?』『活動する上で不都合はないか?』といったように、技術面でも運営面でも非常にオープンに我々を受けいれ、一緒にやって来てくれました。2019年からはレッドブルテクノロジーを通じてレッドブルとも一緒にやっていますけど、その基礎を作ってくれたのはトロロッソだったわけです。我々が今ここにあるのは、彼らのおかげだと思っています」

 田辺テクニカルディレクターは、うれしそうにそう言った。

 そしてその背景では、すでに決まっていた2021年かぎりでのF1撤退に向けて、一度は棚上げされていた新骨格パワーユニットの開発プロジェクトが再び動き始めていた。

 F1の頂点を獲るという挑戦は、まだ終わっていない。最後の戦いに向けて、技術者たちは全力で戦い続けていた。

(第8回につづく)

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