「一番を目指して本当に本気でやったかどうか」。F1史上最も緊迫した2021年シーズンで有終の美。ホンダの挑戦は終わった (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【ペレスの献身的なサポート】

 ハミルトンは2本目のバックストレートでもトウ効果を得て、接触寸前までフェルスタッペンのテールに食らいてアウトに並びかける。だが、フェルスタッペンはインを死守して首位の座を維持し、ここで勝負あった。

 フェルスタッペンとレッドブル・ホンダは、絶望的な状況から奇跡の大逆転でアブダビGPの勝利を掴み獲り、そして2021年のドライバーズタイトルも勝ち獲ってみせたのだ。

 チェッカーを受けて豪快な雄叫びを上げたフェルスタッペンは、ヘルメットのなかで嗚咽を漏らしていた。

「ものすごく感情的になっていたよ、それは間違いない。バイザーを閉じていれば、誰にも見られなくて済むからね」

 もし、最後のセーフティカー導入時にハミルトンから14秒以上引き離されていれば、ハミルトンは迷わずピットインしてソフトタイヤに履き替え、フェルスタッペンの前でコースに戻り、そのまま確実と思われていた勝利とタイトルを手にしていただろう。

 しかし、フェルスタッペンがあきらめることなくプッシュし続け、18秒あった差を11秒まで縮めていたからこそ、掴み獲ることができた幸運だった。

 それだけでなく、セルジオ・ペレスが自分のレースを犠牲にしてでも第1スティントを21周目まで引き延ばし、垂れきったソフトタイヤで必死にハミルトンと攻防を繰り広げて、6秒のタイムロスを喫させていた。この6秒がなければ、最後にセーフティカーが入ろうともハミルトンは悠々とソフトタイヤに履き替えて勝利していたはずだった。

「チェコがいなければ、僕は今日ここに座っていなかったと思う。あのブロックがなければ、ルイスは(最後のSC導入時にポジションを落とさずピットインできる)セーフティカーウインドウを得ていたはずだからね。間違いなく今日のチェコはすばらしいドライビングをしてくれたよ」

 ペレスは最後、パワーユニットを使い切り、コース上でブローアップすればセーフティカーからのレース再開がなくなってフェルスタッペンの逆転チャンスを奪いかねないため、そのリスクを避けるべくマシンをピットに戻し、自分のレースを犠牲にした。

 チームが一丸となって可能なかぎりの力を尽くし、最後まであきらめなかった。だからこそ、この幸運が巡って来たのだ。

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