「一番を目指して本当に本気でやったかどうか」。F1史上最も緊迫した2021年シーズンで有終の美。ホンダの挑戦は終わった (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【一番じゃなきゃダメですか?】

 このレースを最後にF1から去っていくホンダにとっても、ようやく手にした栄冠。2015年から7年間にわたって苦難を乗り越え、彼らもどんなことがあってもあきらめずに全力を尽くし続けてきた。

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターも、ようやく肩の荷が下りたという表情で喜びを噛み締めるように静かに語った。

「2015年から参戦してここまで7年間、非常に苦しい時代から徐々に上向いてきて、去年は王者メルセデスAMGから離されてかなり厳しい状態でしたが、今年は両チャンピオンシップを戦えるところまで来られたことを非常にうれしく思っています」

 勝ちにこだわって頂点を目指してきたからこそ、どんな苦しい時も乗り越えてこられた。

 あまりに高すぎて届かないのではないかと思えるようなライバルの背中を追えたのも、自分たちの技術力を信じることでやって来られたと田辺テクニカルディレクターは振り返る。

「執拗に勝ちにこだわった開発を続けてきた技術陣、それを支えてくれたオペレーション陣、メンバーを海外に送り出す家族のサポート、そういったことがあっての結果だと思っています。ホンダF1に携わってくれた人たち全員ひっくるめて、全員の努力の結果です。本当にありがとう、本当におめでとうという気持ちでした」

 ホンダにとっては、1991年のアイルトン・セナ以来となるタイトル。

 30年間目指し続けた「一番」に、ようやく手が届いた。だが、本当に何よりも価値があるのは、その結果よりも、夢を追い求めここまで歩んできたという事実だ。

「『一番じゃなきゃダメなんですか?』という言葉がありましたが、その一番を目指す、そこに向かってみんなで努力する、という過程が重要なのではないかと思っています。結果として一番にならなければダメということよりも、一番を目指して本当に本気でやったかどうか、というところが自分たちの肥やしになると思います。

 私たちは全員が本気で勝ちにこだわってやってきたんです。たとえ両タイトルともに獲れなかったとしても、その努力とこだわりは、我々のメンバーが仕事をしていくうえで非常に貴重な経験になるでしょうし、将来に大きく生きるものだと思っています」(田辺テクニカルディレクター)

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