「一番を目指して本当に本気でやったかどうか」。F1史上最も緊迫した2021年シーズンで有終の美。ホンダの挑戦は終わった

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 歓喜の瞬間は、唐突に訪れた。

 スタートで出遅れたマックス・フェルスタッペンは、ソフトタイヤでプッシュしようとも、先にピットインしようとも、2ストップ作戦に変更して20周もフレッシュなタイヤで攻めようとも、ルイス・ハミルトンとの差は縮まらなかった。

 7年連続王者メルセデスAMGの壁はあまりにも高く、レース終盤を迎えた挑戦者レッドブル・ホンダとフェルスタッペンには、もう打つ手は残されてはいなかった。

 あとは、奇跡を願うしかない。

 そんな状況で、まさに奇跡が起きた。

フェルスタッペンがついにF1王者となったフェルスタッペンがついにF1王者となったこの記事に関連する写真を見る「とても疲れたよ。スタートはよくなかったし、レース序盤は明らかにペースが足りなかったけど、それでもできるだけ彼についていって、何ができるか模索したんだ。かなり苦しかったけど、チェコ(セルジオ・ペレス)がすばらしい仕事でルイスを抑え込んでくれて、またギャップが縮まった。そこから再スタートしたけど、また彼が引き離していった。

 VSC(バーチャルセーフティカー)が出たところで(2ストップ作戦に切り替える)異なるトライをしたけど、やはり速さが足りなかったから、それもうまくいかなかった。状況を打開するチャンスすらないんじゃないかと思った。でも最後に、セーフティカーが出てものすごくクレイジーな展開で状況が一変したんだ」

 53周目にクラッシュが発生し、セーフティカー導入。すかさずレッドブルはフェルスタッペンをピットに呼び入れ、ソフトタイヤに交換する。首位ハミルトンがピットインすれば、失うもののないフェルスタッペンがコース上にとどまって首位の座を奪い取る。だから、ハミルトンはピットインできなかった。

 レースは残り1周で再開。

 44周も走ってきたハードタイヤのハミルトンを、予選で3周スロー走行しただけのソフトタイヤを履くフェルスタッペンが抜き去るのは時間の問題だった。

 それでもハミルトンは、ターン5であえてインを空けてフェルスタッペンを先行させ、自分は立ち上がり重視でトウを使って車速を伸ばし、フェルスタッペンに襲いかかる。フェルスタッペンはターン2〜3で疲労のピークに達した右脚が痙攣し、それでもターン5のブレーキングからスロットルを全開で踏み続けた。

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