フェルスタッペン、母国GPで王者の風格。ハミルトンの揺さぶりも動じぬ強さ (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 その後、ハミルトンは猛プッシュでタイム差を0.7秒まで縮め、引き離そうとするフェルスタッペンに対して再度の先手でピットインを仕掛けてきた。しかし、フェルスタッペンはここ一番でマシンの速さを出し切って巧みに抑えてみせた。

 ミディアムタイヤが残っていたメルセデスAMGに対し、レッドブルは「ソフト」か「ハード」しかない。ハードはFP1で11周走っただけで、ロングランのデータがない。「ソフトタイヤを履かせて最後に性能低下に直面させてやろう」というのが、2ストップ作戦を採ったメルセデスAMGの揺さぶりだった。

 しかし、レッドブルはハードタイヤを選び、未知数ながらもフェルスタッペンが巧みにコントロールしてゴールへと運ぶ。ハミルトンは自身もタイヤのタレに苦しみながらも、最後まで背後でプレッシャーをかけ続ける。

 それを振り切ってのトップチェッカー。レッドブルとフェルスタッペンは、再三に渡るメルセデスAMGの揺さぶりに惑わされることなく、勝利を掴み獲ったのだ。

 地元の英雄が勝利を収め、チャンピオンシップのリードも取り戻した。それだけではなく、目の前で超一流のドライバーふたりによるすばらしいレースが繰り広げられた。そのことに対し、7万人の大観衆からは惜しみなく拍手と賞賛が贈られたのだ。

 一方の角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)は、このレースから週末全体に対するアプローチをさらに一歩進め、慎重に速さと自信を積み重ねていく手法を採った。

 シーズン序盤戦は不用意なミスでレース週末を台なしにすることが多く、第9戦シュタイアーマルクGPからは「セッションごと」に一歩ずつ前進するアプローチへとあらためた。だが、今回からは「ラップごとに」走り方や学び方、攻め方を意識して積み重ねていくアプローチを導入した。

「最近のレースでは(フリー走行から)ビルドアップしていくことに集中したアプローチを採って来ましたが、今回は1周ごとの走行にも集中しました。シーズン前半戦は予選前に全開でいってうまくいくときもあったものの、ほとんどはバリアに突っ込むという結果になっていました。

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