中野信治がF1王者争いを解説。大クラッシュのイギリスGPなどハミルトンとフェルスタッペンの力関係も語った (2ページ目)

  • 川原田 剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo

 8度目の世界王者を目指すハミルトンの強みは、やっぱり圧倒的な経験値です。フェルタッペンがタイトル争いをするのは今シーズンが初めてです。その経験をハミルトンは過去に何度もしてきています。経験という面ではちょっと抜けていますね。

 だからこそ、賢いレースができている。フェルスタッペンと接触し、10秒のタイムペナルティが課された第10戦のイギリスGP、チームのタイヤの選択ミスで最後尾から追い上げることになった第11戦のハンガリーGP、この2戦でもチームと一丸になってリカバリーし、しっかりと結果を残しています。積み上げてきた経験による部分は大きいと思いますね。

 反面、年齢を重ねている分、やっぱり若い頃のようなキレキレのドライビングはできなくなっているように感じます。かつてのハミルトンは強引にマシンをねじ伏せるような走りをしていましたが、現在は力を技に転換して、いなしながら走らせるということを覚えています。そこがすごいなと感心します。

 対してフェルスタッペンは、若い頃のハミルトンと同等か、それ以上のキレキレの走りができています。ただ、追い上げていく時や接戦の時のフェルスタッペンの動きを見ていると、速さはありますが、かなりリスクを伴った走りをしているように見えます。

 ハミルトンはそれほどリスクを冒しているように僕には見えません。第2戦のエミリア・ロマーニャGPで周回遅れのジョージ・ラッセルを抜くのを急いでクラッシュしましたが、それ以外のところでは確実にやっています。リスク管理の面ではハミルトンのほうが一枚上手かなと感じます。

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