日本一速い女・小山美姫。レッドブルの重鎮からの電話で海外参戦を決意 (3ページ目)

  • 川原田剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto) 磯貝琢哉●動画 video by Isogai Takuya

ーードライビングに関しては他のドライバーたちと比較してどうでしたか? 

小山 「このドライバーに敵わない」と思ったことは一度もありませんでした。ただ、レースウィークの限られた時間の中で速く走るための柔軟性や対応力が足りなかったと感じています。

 Wシリーズの参戦ドライバーの約3分の1がヨーロッパ出身者で、コースも知っています。いわば私が富士スピードウェイでレースしているようなものです。だから私がするべきことは、みんなよりも「早く速く」なることですよね。一緒じゃ、勝てないんです。決められた20Lapsの中で、皆が10個のことを吸収するなら、私は30個吸収し、一つずつ学んで次につなげていくしかありません。トップを取るには、常に成長することが必要です。 

 あと、オーディションにエネルギーを注ぎ過ぎたかな、とも感じています。結果的にトップの成績を残せましたが、Wシリーズが始まるというアナウンスを聞いたときから、すぐに準備を始めました。一緒にオーディションを受けるドライバーのプロフィール、テストで使用するマシンやタイヤ、会場となるサーキットなどを徹底的に調べ、多くの方にアドバイスもいただきながら英語のプレゼンテーションで話す内容を練りました。英語の練習も繰り返しました。 

 半年間、意識を切らさず自分にやれることは全部やりました。オーディションの合格は通過点に過ぎない。もっと先に行かなければならないという思いがありました。でも、だからこそ絶対に外せない最初の段階へ向け、万全の準備をしていました。 

 プレゼンテーションの本番は緊張しガタガタと声が震えてスムーズに話せませんでした。必死に面接官に「今ここにいるのは支えていただいている皆さんのおかげ。自分の夢はF1ドライバーになることです。女性同士で戦うことは望んでいませんでしたが、ここがF1への近道だと思いますので、何としても参戦したい!」と伝えました。 

 結果、私の気持ちが通じ、最終日に行なわれたトーナメント戦でも一番を獲り、評価してもらえました。私には足りないものが多過ぎて、オーディションに向け自分の目標レベルに達するために力を注いだため、正直、開幕時には疲れていました。だからシーズンに対して準備ができていたかといえば、十分ではなかったかもしれません

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