日本一速い女・小山美姫。レッドブルの重鎮からの電話で海外参戦を決意 (4ページ目)

  • 川原田剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto) 磯貝琢哉●動画 video by Isogai Takuya

ーーそれでもWシリーズの報道では毎戦、大きく取り上げられていましたね。 

小山 私の中ではセレクションをトップで通過していたので、開幕戦は絶対に優勝しなければならないと思っていました。ところが予選が18台中17位、決勝は10台を抜きましたが7位。自分自身に失望し、悔しくてガン泣きしながらピットに帰ってきたら、インタビュアーが私のところに来るんです。

「なんで7位の私に話を聞きにくるの?」と思っていたら、「ミキ、すごい。怒涛の追い上げだったね! ラスト2周は全体の最速ラップを連続でマークしていたよ。いい走りだった」って。「えっ!」ってビックリでした。日本だと普通、1位や2位の選手にインタビューするじゃないですか。でも海外ではちょっと違いますね。刺激的なものが好きなんですよね。だから、その時ばかりは1位の選手よりも祝福されていた気がします。

 ヨーロッパの人たちは、もちろん全員ではないかもしれませんが、悪いところより良いところをピックアップしてくれることが多かったので、自分のことを引き出してくれたと思います。だからミスをしたとしても、いつまでも頭を抱えて落ち込んでいられませんでしたね。

ーーそれでは海外のレースを楽しめたということですね?

小山 楽しめたかどうかはわかりません。最初のうちは言葉もあまりわからなかったので、とりあえずわかる英語を使って、「ハーイ」みたいね感じで(笑)。そのうち、気が付いたら周りから(いい意味で)イジられるようになって、助けてもくれました。もちろん、マシンに乗ったら敵同士ですが、全体ミーティングなどで難しい話題になると、「ミキ、今の話わかった?」と聞いてくれるんです。「わかんない」と言うと、簡単な英単語でわかりやすく説明してくれて、それでもわからない時は、身振り手振りで教えてくれました。皆がいなければ私は成長できなかったと本当に思います。

 メカニックやエンジニアも同世代の方が多かったのですが、あるレースの前にヘルメットをかぶったら、メカニックのひとりが「ヘルメットの中を見ろ」と合図していました。なんだろうと思って見たら、「I LOVE YOU」と書いてあったんです。本番前にこっちは戦う気でいるのに、そういうのは今じゃないでしょうって(笑)。

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