玉田誠は亡き友の誕生日にMotoGP初優勝。最高の贈り物を病床の母へ届けた (3ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 さらに、この決勝が行なわれた7月4日は、玉田の親友であり目標でもあった加藤大治郎の誕生日だった。

「トップに立ってからそのことを考えましたね。決して頼っていたわけじゃないけど、大ちゃんに背中を押してもらったような気もする。この上ない誕生プレゼントになりました。最高です!」

 この日の夕刻、もう少し話を聞こうと思ってチームのオフィスを訪ねると、玉田はすでにスーツケースを準備して帰り支度を整えていた。祝勝会やパーティをせず、今から空港へ向かい、そのまま日本へ帰るのだという。

 実はこのとき、玉田の母サカエさんは癌で病床に伏せていた。母は、地球の裏側で表彰台の頂点に立つ息子の姿をテレビの画面越しに鑑賞した。そして、数日後に、サカエさんは世界一速いロードレーサーとなった息子に看取られながら息を引き取った。こうして玉田は、友と母に自らの力で最高の贈り物を届けた。

 約1カ月の夏休み期間を経て後半戦になると、第11戦ポルトガルGPで玉田は自身初のポールポジションを獲得。決勝は2位で終えた。優勝は、4連覇への地歩を着々と固めつつあるロッシ。玉田は「今日のロッシは本当に速かった」と話す一方で、「2位はやはり悔しい。笑っていても、どこか顔が引きつっているのがわかるんですよ」とも述べた。

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