加藤大治郎という天才ライダーの生きた証。その走りは決して色あせない (4ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 RC211Vに初めてまたがったにも関わらず、加藤はこのレースで2位に入った。その順応性の高さゆえに、パドックでは「どこかでこっそりテストをしていたに違いない」と、陰謀論めいた憶測も一部で流れた。だが、そのような邪推すら、むしろ彼の卓越した才能を逆に示す例証だったといっていいだろう。

 ツインリンクもてぎで行なわれた秋のパシフィックGPでは、ポールポジションを獲得。決勝にも大きな期待が集まったが、クラッチに不具合が生じてリタイア。8周目の90度コーナーでスローダウンしたときには、実況放送が大声で叫び、観客席から大きなため息がどよめいた。

 MotoGPのデビューシーズンは結局、ランキング7位で終えた。

 翌03年の開幕直前に加藤の姿をみたとき、小柄な体格の首回りは一層太くなっていた。また、胸板も厚みを増していることが、着衣越しにも見てとれた。加藤のマネージャーは、「MotoGPマシンを意のままに扱えるよう冬の間に徹底的なトレーニングを重ねてきた成果だ」と話した。

 その数日後に行なわれた開幕戦鈴鹿で、アクシデントが発生した。

 次戦の南アでは、チームメイトのセテ・ジベルナウが劇的な優勝を飾った。ウィニングランでジベルナウは、天を仰いで指差した。

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