大混戦MotoGPはシーズン折り返し。「土曜に速いライダー」が汚名返上 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●写真 photo by Takeuchi Hidenobu

 土曜午後の予選で、圧倒的な速さを見せていたのは、MotoGP2年目のフランチェスコ・バニャイア(プラマック・レーシング/ドゥカティ)だ。皆から「ペコ」の愛称で呼ばれるバニャイアは、前週のサンマリノGPで最高峰クラス初表彰台の2位を獲得。実はこのレースは、右脚脛骨(けいこつ)骨折からの復帰戦で、まだ松葉杖をついて歩くような状態だった。

 2週連戦の今回も脚の状態に大きな変化はなかったが、前戦の表彰台が大きな自信になって、フリープラクティスの段階から上位につけていた。土曜午後の予選では、ビニャーレスが圧倒的な速さでサーキットのオールタイムラップレコードを更新した直後に、さらにそれを上回るタイムを叩き出した。しかし、ごくわずかにコースの限界をはみ出していたとしてラップタイムがキャンセルされ、2列目5番グリッドからのスタートになった。

 日曜のレースでは、6周目にビニャーレスを抜いてトップに立つと、あとはぐいぐいと引き離して独走モードに持ち込んだ。シーズン5人目の劇的なMotoGP初優勝選手が誕生するのは確実にも見えたが、レースが終盤に差し掛かった21周目に転倒。これにより、2番手を走行していたビニャーレスがトップに浮上した。ビニャーレスも3番手以降を大きく引き離していたために、バニャイアが消えたことでトップを独走する形になった、というのが今回のレースの「ストレンジ」な顛末(てんまつ)だ。 

MotoGP第8戦のマーベリック・ビニャーレスMotoGP第8戦のマーベリック・ビニャーレス  転倒ノーポイントで終えたバニャイアは、レース後に「転んだラップのデータを見ると、その前の周と同じ箇所でブレーキングして同じラインを走り、バイクのリーンアングルも同じでスピードもまったく一緒だった」と明かし、「なにか路面の汚れにでも乗ってしまったとしか思えない」と寂しそうな笑みを浮かべた。

 とはいえ、それもレースだ。どれほど速く走っても転倒で終えてしまえば、そこから先のことはすべて「たら・れば」でしかない。優勝した選手は、最後まで高い水準を安定して維持し、コンスタントに走り続けていたからこそ、勝利を引き寄せることができたのだから。

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