7年6回王座獲得。MotoGPホンダのエース、マルケスの強さの根源 (5ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 その点に関して、マルケスはこれまでに何度も、その日に見せたスーパーセーブについて訊ねられているが、その度に、あっけらかんと笑いながら自分の取った対応について克明に説明をしてきた。それは常に奇跡的なマシンコントロールなのだが、聞いている側をなぜか楽しい気分にさせてしまう明るさは、天性のものだ。

 もうひとつ、どんなに強いプレッシャーでもそれを結果へ転換できてしまう強靱な精神も、マルケスの持つ大きな特徴といっていいだろう。

 例えば、18年に彼が日本GPでチャンピオンを決めた際に、そのウィークの推移について質問をした時のことだ。マルケスから、こんな言葉が返ってきた。

「今回のレースがホンダにとって重要だということは、最初からわかっていたよ。プレッシャーももちろん、感じていた。でも、ぼくはプレッシャーがあるとうまくやれるんだ。だから、プレッシャーは好きだし、プレッシャーがない時でも(あえて自分から)作ろうとするんだ。そのほうが集中できるんだよ」

 この強靱な精神力と並外れた集中力が、数々の負傷から復活し、乗り越えてきた原動力にもなっているのだろう。それに加えて、卓越した身体能力とライディングセンス、さらに、毎シーズンの厳しいチャンピオン争いを続けることで洗練させてきた冷静なシーズン戦略。これらがすべて噛み合うことにより、年々、マルケスのレースからは隙がなくなってゆき、一時期の彼は本当に無敵に見えた。

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