2020.08.28

次の日本人F1ドライバー誕生はいつ?
夢をあきらめない松下信治の挑戦

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy

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 松下信治がバルセロナで表彰台の中央に立った。今季6ラウンド目、F1のサポートレースとして開催されているFIA F2のレース1での出来事だ。

 本当は開幕当初から、すべてのレースでこれをイメージしていた。しかし現実はそれと真逆で、予選では10位以下に沈み、決勝でも集団に飲み込まれて上位で戦うことができないレースが続いた。

FIA F2で今季初優勝を果たした松下信治 毎戦インターネット回線を通じて話をしていても、松下の表情に滲む苦悩の色はどんどん濃くなっていった。精神的にもかなり追い詰められていた。

「今までで一番ですかね......。予想していた位置とは真逆に行ってしまっているので、すごくしんどい。トップ10以内で8位とか9位でもうちょっとだなっていう順位ならまだしも、そういうレベルじゃなかったんで、そこがすごくつらかった」

 実はバルセロナの勝利も、予選18番グリッドからの大逆転劇だった。

 あえて主流ではない硬いほうのタイヤを履いてスタートし、レース終盤まで引っ張る作戦。ちょうどそのタイヤ交換のタイミングで事故が起き、セーフティカーが入る幸運に恵まれた。つまり、ピットストップ1回分のタイムロスを帳消しにすることができたからだ。

 だが、同じ戦略を採った7人のドライバーには、等しくそのチャンスがあった。しかし、そこまで引っ張ることができたのは松下のみ。優れたタイヤマネジメント能力があったからこそ、松下はこの大逆転のチャンスを視野に入れた戦略を成功させることができたのだ。

「ここは抜けないサーキットだから、変についていってもタイヤを傷めるだけですから、序盤は抑えて走りました。だから(オプションタイヤスタートの)チームメイトと比べると、そこでかなり差がついたんです。だけど、そこでセーブした分だけあとで良くなったので、作戦としてはよかったと思います」

 もちろん、幸運だけで勝てたわけではない。セーフティカーが明けたあとは、それまで上位を走っていたドライバーたちと同じ条件での戦いになった。それでも松下は2台を抜いてトップに立ち、最終周にはファステストラップも記録し、勝利を掴み獲ってみせた。