次の日本人F1ドライバー誕生はいつ?夢をあきらめない松下信治の挑戦 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy

 予選が悪ければ後方からのスタートになり、遅い集団の中で走ることになれば、本来の力を発揮することはできない。上位で走れば優勝争いができるドライバーでも、集団に埋もれればトップ10まで浮上することすら難しい。それがFIA F2というレースの難しさだ。

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 GP2時代から数えて5年目のシーズン。現在26歳の松下は「これが本当に最後の挑戦」とはっきり口にする。

「去年はもう少しのところでスーパーライセンスが取れなくて、実力的にもうちょっと足りなかった部分もあるけど、運やタイミングの悪さもあった。『もうやり尽くしたし、これ以上やりようはないな』と思っていたら、今ここにいません。だから、F1への思いも変わっていない」

 松下を育成ドライバーとして支援してきたホンダからは、今季は国内レースに戻り、スーパーフォーミュラやスーパーGTといったカテゴリーでホンダのドライバーとして走り、貢献してほしい......ということだった。

 しかし、1年のブランクを経て2019年にFIA F2にカムバックした時も、松下は自分で行動を起こし、必死に参戦資金を集めて自分の思いを貫いた。それと同じように、今回も自力で最後の挑戦をすることを選んだ。

「4年間やらせてもらって結果を出せなかったことは事実。後輩もいるし、これ以上F2参戦を支援できないのも仕方がないことだと思います。だけど、僕は日本に戻りたくなかった。だから自力で資金を集めて、もう1年やると決めました」

 レーシングドライバーとしてのキャリアを考えれば、スーパーフォーミュラやスーパーGTといった国内レースを選ぶと、シートと申し分ない収入が保証される。しかし松下は、何の保証もない茨の道だとしても、自分の思いを貫いた。

「自分のやりたいことを我慢して、日本で(自動車メーカー専属の)プロとして生きるのは嫌だった。自分が行きたい道に挑戦して、最後まで燃え尽きたいと思ったんです」

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