超一流の走りを簡単に実行するストーナー。病と闘い、憧れのチームへ (4ページ目)
しかしロッシは、決勝レースでマシントラブルによりあえなくリタイア。思いもしなかった事態に、満場のロッシファンは水を打ったように静まりかえった。そんな中を、真っ赤なドゥカティのマシンを駆るストーナーはまるで何事もなかったかのように淡々と独走を続け、それまでのレース同様に後続に大差をつけてシーズン8勝目を挙げた。
この勝利でストーナーは25ポイントを加算して271点。一方、リタイアでノーポイントに終わったロッシは186点。シーズンはまだ5戦を残しており、計算上はさまざまな可能性も想定できたものの、ずば抜けた速さで独走優勝を続けるストーナーの勢いを見れば、チャンピオンの帰趨(きすう)は事実上決したに等しかった。
実際にストーナーがチャンピオンを決めたのは、その翌々戦の第15戦日本GPだ。レースで優勝したのはストーナーのチームメイトのロリス・カピロッシ。ドゥカティにとって、03年のグランプリ復帰から5年目での王座獲得。日本のツインリンクもてぎという完全アウェーの地で達成した格好だった。
ストーナーは6位でゴールして、タイトルを決めた。ちなみに、この王座獲得は、彼らにタイヤを提供してきたブリヂストンにとっても、最高峰クラス初制覇という記念すべきものだった。
ストーナー、ドゥカティの圧倒的なパフォーマンスを前に、翌08年は多くの有力ライダーたちが続々とブリヂストン陣営に鞍替えした。結果、09年にはついに、MotoGPクラス全体が公式な競技規則としてブリヂストンのワンメイクルールを採用するに至った。
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