インディカーは終盤戦。佐藤琢磨に
逆転総合優勝のチャンスは?
カナダで唯一行なわれるインディカー・シリーズ。舞台は大都市トロントのダウンタウン近くにある、イベント会場と一般道を使ったストリートコースだ。
路面の素材がコースのあちこちで違っており、前輪と後輪、あるいはマシンの右側と左側がグリップの異なる路面に乗る事態が頻繁に起こる。滑るコンクリートとグリップするアスファルトが続いて現れるコーナーでは、フロントがコンクリートの部分に乗ると滑り出し、後輪も乗った時点で4輪が滑り、フロントがアスファルトの路面に出ると急激にグリップが高まり、コンクリートの路面に乗ったままのリヤは滑り続ける......ドライバーにはデリケートなコントロールが求められ、そうした走りに応えるマシンにセッティングを仕上げることも難しい。
それを今年、完璧にやってのけたのがシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)だった。5月初旬に行なわれた第5戦インディカーグランプリでも、パジェノーはウェットコンディションでの戦いを見事に制した。バンピーでよく滑るトロントも、彼が好きなタイプのコースなのだ。
シリーズ第11戦トロントで今季3勝目をあげたシモン・パジェノー プラクティス2、プラクティス3で最速ラップを記録、フルに実力を発揮した予選ではポールポジションを獲得。優勝したインディ500同様、PPから圧倒的パフォーマンスを見せ、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)の猛チャージを退けてゴールへ飛び込んだ。
5月の2レースですばらしい戦いぶりを見せたパジェノーだったが、その後のレースではトップ争いに絡むこともなく、苦戦続きだった。それが今回は、"突如として"という表現が合うようなセンセーショナルな走りっぷり。「グリップが低く、マシンコントロール能力が試されるトロントのコースが大好き」と、速さの理由を話したが、その前に、彼は自分のレースへの取り組み具合を修正していた。
インディ500で優勝したパジェノーは、その直後からプロモーション漬けになった。夜中までテレビに出続け、翌朝にはインディ500ウィナー恒例のニューヨークでの大々的メディアツアー。翌週のデトロイトのレースウィークエンドが始める直前まで、休む暇もなかった。マシンセッティングをどうするかも電話でエンジニアと話すだけという状況では、ベストのパフォーマンスは期待できない。
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